神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

黒岩比佐子さんと巽孝之氏

黒岩比佐子さんは、『図書』2009年7月号の「村井弦斎マーク・トウェイン」で、

世界的に著名なある作家が、日露戦争当時に『花子』を読んでいたのである。
その貴重な情報を知らせてくださったのは、慶應義塾大学教授の巽孝之氏だった。

と書いている。世界的に著名な作家とは、マーク・トウェインのことで、アメリカの古書店主が、トウェイン晩年の『戦争の祈り』の主題は村井弦斎の英文著作『花子』に誘発されたものであることを論証しているという。巽氏は、既に『三田文学』2007年冬季号の「去年、弦斎公園で」で、この論証のことや、2006年9月「村井弦斎まつり」に参加したことと共に、黒岩さんの『『食道楽』の人 村井弦斎』に言及している。しかし、この弦斎まつりで黒岩さんに出会ったとは書いていない。2008年5月に黒岩さんが慶應で講義をしたときに巽氏は司会をしているから、その時にトウェインに関する情報を教えたのだろうか。

(参考)巽氏は、『図書新聞』12月25日号の「10年下半期読書アンケート」で、『パンとペン』について、「黒岩作品は大杉栄幸徳秋水の盟友たる社会主義者が、いかに今日の編集プロダクションの母胎を成したかを物語る筆のうちに、著者自身のジャーナリストとしての似姿がいつしか浮かび上がってくる、感動的な遺作」と書いている。

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『図書』1月号の「こぼればなし」は、黒岩さんの弦斎伝(岩波書店)、堺利彦伝(講談社)、国木田独歩伝(角川選書)の三著を比読すると、「出版史を本当の歴史として描きえた最初の歴史家の誕生に立ち会っていたこと、しかもその人をすでにして失ってしまったことを、痛切な思いをもって知る」と。それにしても、岩波書店は、あの時点では無名で在野の黒岩さんによくぞチャンスを与えたものだと、感嘆と感謝の思いである。

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週刊読書人』1月7日号から小谷野敦「論潮」が始まった。いつもの、愚痴交じりの猫猫節炸裂。