神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

黒岩比佐子『『食道楽』の人 村井弦斎』の瑕瑾

黒岩比佐子さんの『『食道楽』の人 村井弦斎』(岩波書店)をオールタイムベスト10の一冊に選んだことがある(2007年12月8日参照)*1。これは今でも変わっていない。しかし、その名著にも少しだけ誤りがある。

一つ目に関しては、2006年7月13日に「『村井弦斎』の本文によれば、『桜の御所』は、この年(明治37年)の三月下旬の宮戸座を皮切りに三座で競演されたとある」と書いた。わざわざ「本文によれば」と書いたのは、巻末の年譜で誤って明治36年の欄に記載されているので、黒岩さんにだけわかるように書いたつもりだった。

二つ目は、昨年1月16日に書いた福来友吉大正2年辞職説である。この時あえて言及しなかったが、仮に大正2年10月の福来辞職説を是としても、同じ頁に「福来は大学を辞任した後も、一九一三年に『透視と念写』(東京宝文館)を出版」とあるのはおかしい。『透視と念写』は大正2年8月の発行である。黒岩さんが原典を読まずに言及することはないはずだが、これはどうしたことだったのだろう。

以上のどちらも本論とはあまり関係のない事項だが、昨年6月の第3刷でも訂正されていなかった。気づいてもらえなかったか、闘病中でそれどころではなかったのだろう。もはや本人によって訂正されることはできなくなったが、文庫化される時にでも、前者の年譜の誤りだけでも直せないものだろうか。

*1:黒岩さんは、「錚々たる著者名のなかに変な名前が1つ紛れ込んでいて、冷や汗をかいています。他の方々に申し訳ない、というか……」とコメント。