神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

2023-01-01から1年間の記事一覧

國學院大學講師尾崎久弥に冷たい折口信夫教授と改造社出版部長広田義夫

国文学研究資料館の『調査研究報告』43号で翻刻された真山青果の日記(昭和5年)に折口信夫が出てきて、面白い*1。 (昭和五年三月) 二日 朝ぐもり (略)尾崎久弥君より来書、餓死云々と窮状を訴へて援助を求め来る。彼の人とは二三度面話せるだけにて何んの交際…

東京帝国大学文学部史料編纂所や折口信夫のゴシップが載った昭和10年7月2日付け『東京毎夕新聞』

池田弥三郎『わが幻の歌びとたち:折口信夫とその周辺』(角川書店、昭和53年7月)は、折口の助手を務めた波多郁太郎の日記の翻刻と池田による解説によって、折口とその周辺の歌人・研究者の人間像に迫った好著である。中でも132頁にオモシロい記述があった。 …

お初天神で見つけた家永三郎宛石田一良同志社大学教授の絵葉書(昭和32年)

骨董屋のサイトウさんが亡くなったのは、一昨年だったか。東寺、四天王寺、北野天満宮、新大阪駅前などの骨董市でよくお見かけしました。一見クズの絵葉書を原則100円(その日の気分によっては、はね上った)で売っていて、その中に個人的に「どひゃあ」という…

推し南木芳太郎、萌ゆーー風俗研究会大阪支部幹事松本茂平と南河内の重要文化財吉村邸ーー

ヲガクズさん(@wogakuzu)ほどの南木芳太郎推しではないが、私は早くも平成22年8月には『南木芳太郎日記』第1巻を読んでいる(「南木芳太郎と『食道楽』の時代 - 神保町系オタオタ日記」)。昨年11月第5巻が刊行され完結したので、あらためて既刊分も再読した。…

忍頂寺務らの神戸陳書会で満洲・朝鮮旅行の報告をする三田村鳶魚ーー「ざっさくプラス」で『陳書』総目次が見られるよーー

昭和7年に三田村鳶魚が満洲・朝鮮を旅行したことは、「鳶魚のギョギョギョーー昭和7年三田村鳶魚が見た朝鮮の民俗学者・人類学者群像ーー - 神保町系オタオタ日記」で紹介したところである。鳶魚は、昭和7年7月19日に神戸へ帰港。翌日神戸陳書会により歓迎会が…

明治24年幸野楳嶺門下の都路華香と上田聴秋の『俳諧鴨東新誌』(梅黄社)

今年の四天王寺春の大古本祭りには、不死鳥BOOKSが出品していなかった。その代わりに?瀬戸内アーカムハウスがレコードを出品して、開場前から行列ができていた。さて、今回紹介する上田聴秋主宰の『俳諧鴨東新誌』(梅黄社)は、以前四天王寺で不死鳥BOOKSの…

明治36年堺市で創刊された投稿雑誌『遊子』(遊子会)

『遊子』第10声(遊子会、明治37年9月)は、神戸の古書店つのぶえで買ったか。そうだとすると、300円位だろう。目次も挙げておこう。 小杉榲邨「浮田一蕙がかける孝経の新意匠画」が載っていますね。これは、『近代文学研究叢書』11巻(昭和女子大学光葉会、昭和3…

昭和22年名古屋市で創刊された伊藤小坡表紙絵の美術雑誌『美苑』

『美苑』創刊号(東海美術社、昭和22年7月)は、どこで買ったか不明。戦後の雑誌ではあるが、地方で発行された美術雑誌の創刊号で珍しそう(かつ安かったのだろう)と思って買ったか。編集兼発行人は鈴木麟一、発行所は名古屋市瑞穂区の東海美術社である。「国会…

明治44年赤城山大沼湖畔で河合栄治郎と語る真山青果ーー青田寿美先生の追悼にーー

国文学研究資料館の『調査研究報告』43号が公開され、昭和5年の真山青果日記が読めるようになりました*1。昭和3年・4年分の翻刻については、「「[翻刻]青果日記(昭和三年・昭和四年)」(国文学研究資料館)への補足ーー眞山青果とプラトン社・博文館・春陽…

福羽美静が明治14年に創設した好古社と小杉榲邨

昨年の阪神百貨店の古本まつりにモズブックスが出品した中に、「好古社創立満二十年祝賀入社金割引券」(明治34年5月)と「好古社畧則」があった。3百円と手頃だったので購入。好古社は明治14年福羽美静が創設した蒐集家の団体である。昭和女子大学近代文学研究室…

鳶魚のギョギョギョーー昭和7年三田村鳶魚が見た朝鮮の民俗学者・人類学者群像ーー

戦前の船中読書については、「船内で独歩全集を読む大川周明 - 神保町系オタオタ日記」で言及したことがある。これとは別の事例が、坂野徹・槇蒼健編著『帝国の視角/死角:〈昭和期〉日本の知とメディア』(青弓社、平成22年12月)の菊地暁「智城の事情ーー近代…

挿絵画家武内桂舟と中外商業新報の岩本傳ーー武内桂舟は昭和18年没ですよ~ーー

今年も四天王寺で春の大古本祭りが4月28日~5月5日に開催されます。古書目録が届いたので見てみると、シルヴァン書房が恩地孝四郎や渋谷修の絵葉書を出品していた。中々いい値段なので、手が出ない。シルヴァン書房が古本祭りで並べる箱に入った絵葉書は3千…

三田村鳶魚らの西鶴輪講と夏秋十郎の娘夏秋園子ーー吉田暎二の『歌舞伎研究』会員だった夏秋園子ーー

昨年だったか下鴨納涼古本まつりで竹岡書店の3冊500円均一台に『歌舞伎研究』(歌舞伎出版部)が大量に出ていた。散々迷ったが、3冊のうちの1冊として第1集、大正15年9月再版を購入。今は無き大書堂のラベルが貼られていた。本誌は、歌舞伎座に勤めていた吉田…

菟道春千代のプチブームがキター⁉ーー菟道にも出てきたヨコジュンーー

『近代出版研究』2号(近代出版研究所発行・皓星社発売)が来月発売されます。小林昌樹所長の人徳で豪華メンバーの力作が並ぶほか、京大UFO超心理研究会の先輩である横山茂雄先生へのロングインタビューも掲載されますので、よろしくお願いします。→「近代出版…

大槻憲二が主宰する東京精神分析学研究所の京都分室主任だった前衛画家小牧源太郎

伊丹市立美術館などが統合されてできた伊丹ミュージアムへ、先日行ってきた。「小牧源太郎 生きとし生けるもの」展である。なお、会期は終了しています。SF的な作品の「初期シュルレアリスム的時代」はもちろん、川勝政太郎の史跡・美術同攷会に参加したり、天野…

古書あじあ號から後藤捷一編『早苗田:歌集』(昭和13年)をーー後藤捷一、明石染人と南木芳太郎ーー

今月の「たにまち月いち古書即売会」では、古書あじあ號から和本を4冊購入。古本横丁に負けじと?最近あじあ號も和本を出すようになった。ただし、古本横丁に比べると冊数は少なく均一でもない。古本横丁の方は、相変わらず業者のおじさんが段ボール箱にボンボ…

大東亜図書館学の小川寿一旧蔵『趣味之北日本』(郷土研究社)と谷村一太郎、そして中田邦造

昨年知恩寺の古本まつりで竹岡書店の8冊まで500円台から、『趣味之北日本』3号(郷土研究社、昭和6年11月。以下「本誌」という)を発見。郷土研究社は金沢市に所在し、発行兼編集人は金沢市の大蔵一郎である。『書誌学』5号(日本書誌学会、昭和41年7月)所収の山…

後の大谷大学学長山辺習学が昭和3年島津忠重公爵邸で開催した仏教講話

尚友倶楽部・季武嘉也・櫻井良樹編『財部彪日記』(芙蓉書房出版、令和3年11月)の索引を見てたら、山辺習学が出てきた。8回出てきて、すべて財部が袖ヶ崎の島津忠重公爵邸で開催された山辺の仏教講話に参加したという記述である。一部を引用しておこう。 (昭…

カード・インデックスで在庫管理をしていた?大阪の古書店アジア書房

これも、難波神社のヒマガミで入手。『経済と社会』(アジア書房、昭和7年10月)。戦前の古書目録というだけで買っていたら切りが無いので、面白そうな寄稿が載っているものに限定して購入するようになってきた。今回は、「東亜同文書院教授植田捷雄宛絵葉書 - …

桜男の笹部新太郎が昭和19年大阪造兵局で開催した桜の会と南木芳太郎

昨年5冊目で完結した『南木芳太郎日記』(大阪市史料調査会)。本当に趣味人が多く出現する日記である。@wogakuzuさんが「人名索引や事項索引がほしい」とつぶやいておられたが、誠にそのとおりである。「田中緑紅が創設した演芸研究会「柝の音会」の幹事加藤菊次郎…

須田国太郎や明石染人と交流のあった田中緑紅と豊ヶ丘農工学院の漢見信子

太田喜二郎や須田国太郎と年賀状のやり取りをした津崎信子(のち漢見信子)については、「太田喜二郎人生最後の年賀状ーー津崎信子宛年賀状からーー - 神保町系オタオタ日記」で言及したところである。その後@pieinthesky氏からおまけに貰った(又は追加で買っ…

田中緑紅が創設した演芸研究会「柝の音会」の幹事加藤菊次郎

先日難波神社の骨董市「ヒマガミ」をのぞいてきました。9時~11時は有料(千円)なので、11時過ぎに入場。貧乏なのと千円出して何も買わなかったら馬鹿みたいなので、いつも有料時間帯には行っていない。人より先んじていい物を入手したいという気迫もないので…

吉永進一「ピラミッドゼミ」 VS. 神保町のオタ「日本オカルティズム入門ゼミ」ーー横山茂雄ロングインタビュー掲載『近代出版研究』2号が4月発売ーー

早いもので吉永進一さんが亡くなられて、今月末で1年になる。亡くなって数ヶ月間は思い出すだけで涙が出たが、もうそういうこともなくなった。吉永さんとは、大学に入ってUFO超心理研究会で出会って以来の仲である。当時の吉永さんは相手によっては厳しい人…

壽岳文章と上方郷土研究会の南木芳太郎ーー向日市文化資料館で「寿岳文章と向日庵本の世界」開催中ーー

昨年11月第5集で完結した『南木芳太郎日記ーー大阪郷土研究の先覚者ーー』(大阪市史料調査会)は、読むのが楽しい日記である。第5集に小早川秋聲が出てくることは、「昭和19年《國之楯》を完成した直後の小早川秋聲が『南木芳太郎日記五』に - 神保町系オタ…

昭和19年《國之楯》を完成した直後の小早川秋聲が『南木芳太郎日記五』に

昭和19年2月22日小早川秋聲の《國之楯》が完成した。この作品は、一昨年の夏京都文化博物館の「小早川秋聲 旅する画家の鎮魂歌」展で展示された。この時期の小早川が、『南木芳太郎日記五』(大阪市史料調査会、令和4年11月)に出てくるので、紹介しておこう。…

東大の博士論文に「神保町系オタオタ日記」登場ーー鈴木聖子『「科学」としての日本音楽研究』にスメラ学塾ーー

国会図書館デジタルコレクションで全文検索の対象範囲が飛躍的に拡大され、研究環境に革命が起きたようだ。例えば、「神保町系オタオタ日記」で検索すると、鈴木聖子氏の博士論文『「科学」としての日本音楽研究:田辺尚雄の雅楽研究と日本音楽史の構築』(東京…

大阪古書会館で脇清吉の『プレスアルト』77号(プレスアルト会、昭和24年)を

広告印刷物の実物付きの研究誌『プレスアルト』を昭和12年1月に創刊した脇清吉については、「ワキヤ書房の脇清吉とイスクラ書房の黒木重徳 - 神保町系オタオタ日記」などで紹介したところである。戦前分(~73号、昭和19年3月)*1は柏書房から復刻版が刊行され…

福島県只見町生まれだが寒がりのオタどんーー内山大介・辻本侑生『山口弥一郎のみた東北』を読むーー

南陀楼綾繁『古本マニア採集帖』(皓星社)を読んだ人は、私が昭和34年に福島県南会津郡只見町で生まれ、その後静岡県清水市で育ったと覚えているかもしれない。今戸籍を見ていたら、より詳しくは只見町大字石伏字澤の下で生まれていたことが判った。ただ、…

喫茶進々堂のテーブルを作った黒田辰秋と平瀬貝類博物館ーー併せて梅原真隆と仏教児童博物館ーー

昨年最も印象的だったのが、龍谷ミュージアムの「博覧ーー近代京都の集め見せる力ーー 初期京都博覧会・西本願寺蒐覧会・仏教児童博物館・平瀬貝類博物館」展であった。最近その時の興奮を再び呼び起こすかのように、平瀬貝類博物館や仏教児童博物館に関する記…

大塚英志『大東亜共栄圏のクールジャパン』(集英社新書)にスメラ学塾

大塚英志『大東亜共栄圏のクールジャパン:「協働」する文化工作』(集英社、令和4年3月)にスメラ学塾が出てくる。「第四章 大東亜共栄圏とユビキタス的情報空間ーーアニメ『桃太郎 海の神兵』と柳田國男」の「四 スメル文化圏と南方言説」である。 (略)「スメラ…