神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

昭和22年名古屋市で創刊された伊藤小坡表紙絵の美術雑誌『美苑』


 『美苑』創刊号(東海美術社、昭和22年7月)は、どこで買ったか不明。戦後の雑誌ではあるが、地方で発行された美術雑誌の創刊号で珍しそう(かつ安かったのだろう)と思って買ったか。編集兼発行人は鈴木麟一、発行所は名古屋市瑞穂区の東海美術社である。「国会図書館サーチ」、「愛知県図書館横断検索」、「美術図書館横断検索」でヒットしないので、中々残らないものである。
 ただし、「日本の古本屋」の出品記録*1では過去2軒が出品していて、売り切れである。表紙絵が伊藤小坡なので、人気があるのか。このように古書店の出品記録から幻の本や未知の文献が確認できることがある。かわじ・もとたかさんが作成した創刊号リストも、古書目録に出品された情報を活用したものである。先日、目録を切り貼りしたノートをいただきました。ありがとうございます。

 本誌の目次も挙げておく。ノンブルは7頁から始まっている。表紙が1頁で口絵(矢野知道人、富取風堂、中村岳陵、石川英鳳)が3・4頁、「創刊の辞」が5頁、「目次」が6頁とカウントされているようだ。「編集後記」には、「『現代日本画家名鑑』編集が意外に手間取り、加うるにお願いしていた先生方の原稿が、色々の御都合で遅れた為め、最初の予定とは随分巨【ママ】離のあるものになつた」とある。この『現代日本画家名鑑』(昭和22年7月)は、国会図書館に所蔵されている。
 「各展」は、展覧会の予定表で、「堂本印象/藤田嗣治二人画展」が出ている。7月25日から31日まで、大阪の高島屋で予定されていたようだ。『日本美術年鑑:昭和22年-26年度』(印刷庁、昭和27年2月)の「現代美術展覧会」によれば、昭和22年7月14日から19日まで高島屋で同展覧会が開催されている。こちらは、東京の高島屋か。出品リストは残っているのだろうか。再現展を開催してほしいものである。
 名古屋に本店があった東海美術社。東京や京都にも支店があり、手広くやろうとしていたようだ。また、本誌の「創刊の辞」で、「念願するところは、日本美術の振興にあり、美術思潮の普及にあり、美術家就中美術鑑賞家のための善き伴侶たり、指標たることをもつて第一とする」と宣言している。しかし、『美苑』2号以降の発行は確認できない*2ので、長続きはしなかったのだろう。

*1:「日本の古本屋」の初期設定では「在庫ありのみ」になっているので、チェックを外して検索する。

*2:『郷土文化』42巻1号(名古屋郷土文化会、昭和62年8月)掲載の林眞「愛知県で発行された戦後雑誌(二)」にも、創刊号のみ記載