神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

大槻憲二が主宰する東京精神分析学研究所の京都分室主任だった前衛画家小牧源太郎

 
 伊丹市立美術館などが統合されてできた伊丹ミュージアムへ、先日行ってきた。「小牧源太郎 生きとし生けるもの」展である。なお、会期は終了しています。SF的な作品の「初期シュルレアリスム的時代」はもちろん、川勝政太郎の史跡・美術同攷会に参加したり、天野俊一の仏教美術文様図を模写し作品にとりいれた「仏画的時代」や戦後の稲荷神、オシラ神、道祖神などを取り込んだ「土俗信仰的時代」の作品も注目すべきものであった。ここで、小牧が昭和23年6月から26年12月まで東京精神分析学研究所の京都分室主任だったことを知った。
 江戸川乱歩が大槻憲二主宰の同研究所の所員だったことは、「大槻憲二の東京精神分析学研究所 - 神保町系オタオタ日記」や「東京精神分析学研究所創立期のメンバー - 神保町系オタオタ日記」で言及したことがある。落合教幸・阪本博志・藤井淑禎・渡辺憲司編『江戸川乱歩大事典』(勉誠出版、令和3年3月)には、「精神分析研究会」*1として藤井淑禎先生により乱歩との関わりが詳しく記述されている。
 戦前版の東京精神分析学研究所の機関誌『精神分析』(昭和8年5月~16年3月)は、不二出版から復刻版が出ている。私は戦前版を1冊ぐらいは持っていた気がするが見つからないので、戦後の32巻2号、昭和49年4月の書影を挙げておく。大槻の「藤十郎と西山記者」は、先日亡くなった西山記者事件西山太吉の話である。「新聞記者というものはかくも良心低調、非人間的であってもよいのであろうか」と厳しい意見を述べている。

*1:正式名称ではなく、乱歩が『探偵小説三十年』や『探偵小説四十年』で使用した名称である。