2021-01-01から1年間の記事一覧
「古本が古本を呼ぶ」(by 高橋輝次)と言われるが、「展覧会が展覧会が呼ぶ」こともある。平成28年7月から9月まで京都文化博物館で「アートと考古学 物の声、土の声を聴け」展が開催された。ここで展示された考古学者濱田耕作による昭和8年の石舞台古墳調査…
『学海』2巻7号(秋田屋仮事務所、昭和20年8月10日)は、2年前知恩寺の古本まつりでヨドニカ文庫から300円で購入。和本の均一箱に入っていたような気がする。目次を挙げておく。 「青山光二が描いた京都学派の奇人土井虎賀壽と『鹿野治助日記』 - 神保町系オ…
今月も暢気に(?)大阪古書会館の「たにまち月いち古書即売会」へ。一番乗りした古本横丁では相変わらず争奪戦になったのと、店主の体調を反映してか品揃えがもう一つだったため、1冊も買わず終了。しかし、古書あじあ號や他の店で幾つか買えた。その中に関西…
山路勝彦編著『日本の人類学:植民地主義、異文化研究、学術調査の歴史』(関西学院大学出版会、平成23年8月)に、民族学者で元南洋庁嘱託の杉浦健一が昭和17年7月3日佐藤生活館で行った講演(民族学よりする原住民に対する対策)の原稿が翻刻されている。同館に…
さて五十殿利治「関西『マヴォ』についてーー牧寿雄と『マヴォ』関西支部」*1に補足してみよう。五十殿先生は、牧寿雄について、生没年未詳で経歴も不明、『マヴォ』前後の記録だけが判明していることのすべてであるとしている。今回、牧が大正12年には装幀…
『大手拓次全集』5巻(白凰社、昭和46年8月)に、明治39年に販売開始されたクラブ洗粉が出てくる。 (明治四十一年) 一月二十日 月 (略) 角の薬屋でクラブ洗粉を買つた、初めて洗粉なんか使うのだ、僕も案外野暮だよ。(洗粉は明朝から使ひ初めるのだ)僕はクラブ…
南木芳太郎に届いた古書目録『ほんの趣味』については、「『南木芳太郎日記』に記録された岡山の古書店雅楽堂(シゲオ書店)の古書目録『ほんの趣味』ーー岡山市高砂町の古書店主矢部繁雄ーー - 神保町系オタオタ日記」で紹介したところである。今回は、同じく…
内田美術書肆(のち内田アート)の創立者内田基一から田中緑紅宛昭和6年の年賀状を持っている。同書店は、『京都書肆変遷史』によると、大正8年京都市上京区で創業、内田は昭和46年に84歳で亡くなっている。この内田が昭和2年11月に刊行した『新希臘派模様』と…
『文藝春秋』8月号に後藤正治「古書店は死なず」が載っている。どこの古書店の話かというと、大津市比叡平に移転した書砦・梁山泊京都店である。「はて、はるばる比叡の山道を分け入る客ありやと思うのだが、『お客は自然とやって来るものです』と悠然たる構…
坂野徹『〈島〉の科学者:パラオ熱帯生物研究所と帝国日本の南洋研究』(勁草書房、令和元年6月)に、「書籍館」が出てくる。パラオ研の所長畑井新喜司が昭和13年に東北帝国大学を退官したことを記念に、翌年12月研究所に図書庫が作られた。畑井はそれを「書籍館」…
立正安国会(のち国柱会)の機関誌『妙宗』(獅子王文庫)については、「日蓮上人研究会旧蔵の『妙宗』7編7号(師子王文庫、明治37年9月) - 神保町系オタオタ日記」で紹介したところである。その時は写真を挙げなかったが、今回挙げておく。蔵書印さんのお陰で解明…
船木拓生『侠気の生態学:牧野四子吉と文子の鮮やかな日々』(ぷねうま舎、令和3年4月)。たまたま読んだら面白かった。新刊だが、善行堂に置かれるべき一冊だろう。昭和4年牧野四子吉は、人妻文子*1と東京から京都へ駆け落ちする。東京では百瀬晋に兄事し、南…
「興亜民族生活科学研究所の創立者戸田正三と石田英一郎ーー本田靖春『評伝今西錦司』の誤りーー - 神保町系オタオタ日記」で紹介した興亜民族生活科学研究所の所長となる戸田正三や所員になる今西錦司、三木茂が出てくる日記がある。京都帝国大学理学部植物学…
ここにシルヴァン書房から300円で買った葉書がある。写真のように昭和7年1月6日付けで「赤ん坊の居る窓辺の風景」が描かれた拙い絵である。これも誰も買いそうもない葉書である。私は、発信者の住所が「奉天満鉄附属地」とあって満鉄の関係者らしいことと、宛名…
私は学生時代は左京区吉田に住んでいて、北白川に住んだことはない。しかし、友人や先輩の多くは、北白川に住んでいた。また、いつの時期の話か忘れたが、京大の先生の多くが北白川に住んだと書かれた本を読んだ覚えがある。ということで、今回は北白川と京…
分離派建築会作品展は、大正9年から昭和3年まで開催された。また、五十殿利治ほか『大正期新興美術資料集成』(国書刊行会、平成18年12月)の年表も大正9年から昭和3年までが対象とされている。これは、偶然ではあるものの、両者がシンクロする時代でもあった…
もう1枚の竹内亮宛葉書も、数年前にシルヴァン書房から購入したものである。裏面は、写真のとおり地味に印刷された上智大学名の年賀状である。これを見て買う人はいないだろう。しかし、私は表面に博士宛で発信者が上智大学内とあるので買っておいた。宛名の…
' これも平安神宮の古本まつりでシルヴァン書房から入手した絵葉書。九州帝国大学農学部植物学教室の竹内亮宛である。未紹介だが竹内宛の絵葉書を既に1枚入手していて、名前は知っていた。発信者は、「台北ニテ」は読めるが、氏名が読めない。文面に「天草富岡…
19日(土)から始まった平安神宮の古本まつりも明日(水)までとなりました。おかげさまで色々掘り出し物がありました。初日シルヴァン書房の寸葉さんの所は、常連客で混み合っていた。というのも、常連客には案内状が発送されていたからである。初めてのイベン…
今月も無事開催された大阪古書会館の「たにまち月いち古書即売会」。18日の初日に行ってきました。シルヴァン書房は19日からの平安神宮の古本まつりにも参加するためか、出品のメインが100円均一の文庫であった。もう文庫・新書は見ないことにしているので、う…
京都では、夏に下鴨神社、秋に知恩寺の青空古本まつりが開催される。これらと春のみやこめっせの古本まつりを併せて、「京の三大古本まつり」と呼ばれている。ところが、コロナ禍のせいでみやこめっせは2年連続、下鴨は昨年中止になった。こうした古本界の危機…
今日はたにまち月いち古書即売会の初日。開場前の行列が賑わっていた。20日(日)まで開催。いつも通り古本横丁から廻る。いつものメンバーではない人が多かった。激戦区となって、1冊だけ購入。シルヴァン書房は明日から平安神宮での古本まつりにも参加するの…
名古屋古書会館には、何年も行っていない。そろそろ行きたいと思っていたら、昨年からのコロナ禍で度々中止になっているので、しばらくは無理そうである。本日紹介する『郷土文化』4巻2号(郷土文化会、昭和24年3月)は、その名古屋古書会館で入手したものであ…
何年か前に、金沢大学名誉教授の国文学者川口久雄宛の書簡が出回った。「日本の古本屋」の記録を見ると、加藤楸邨、吉田精一、吉川幸次郎らからの葉書や江藤淳、神田喜一郎からの書簡が売り切れている。当時私も寸葉さんから東京教育大学文学部教授だった和歌…
『白樺』同人だった小泉鉄の書簡を70通ほど持っている。3年前に文庫櫂から購入。貧乏なわしには、やや高額であった。すべて中央公論社の編集者だった三沢澄子宛である。昭和20年8月(推定)から亡くなる年の29年3月までで、晩年の様子がある程度うかがえるもの…
10日無事に開催された平安蚤の市へ。『滋賀公論』創刊号(滋賀公論社、明治23年11月)を購入。24頁、1,000円。国会図書館サーチや滋賀県内図書館横断検索でヒットしないので、貴重な雑誌だろう。目次を挙げておく。 井上円了と中西牛郎の名前があるので、買っ…
平成23年から25年にかけて親族の不幸があり、この間に出た本や論文に見落としが多い。『荷風全集』別巻(岩波書店、平成23年11月)も未読であったので、読んでみた。頼まれたわけでもないのに、同書の「書簡宛名解説索引」(中村良衛作製)に補足してみよう。とい…
3年前に文庫櫂から白川書院の臼井喜之介宛中村直勝書簡を購入。1通500円。「臼井書房の臼井喜之介と野薔薇詩社の稗田菫平 - 神保町系オタオタ日記」等で紹介した富山の詩人稗田菫平宛書簡群の中になぜか紛れていた。4通あって、内容は ・昭和38年2月10日付け …
財界人の日記は、作家や学者等の日記に比べて面白くない。渋沢栄一*1や小林一三*2の日記でも面白い記述は、極一部である。そのため、『平生釟三郎日記』(甲南学園)は手付かずであった。しかし、人名索引を読んでみたら絶句するような名前が幾つか出てくる。…
『秋田雨雀日記』1巻(未来社、昭和40年3月)に新村出の脚本朗読会カメレオンの会と野淵昶のエラン・ヴィタール小劇場が出てくる。 (大正九年) 五月十六日★ 午後一時三十分の汽車で神戸を出発、京都へきた。四時前についた。林久男君がきていた。三人で、谷村…