神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

明治41年クラブ洗粉を使う大手拓次ーー8月からクラブコスメチックス文化資料室で「コスメチックス広告 広告にみる大正ロマンと昭和モダン」展ーー

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 『大手拓次全集』5巻(白凰社、昭和46年8月)に、明治39年に販売開始されたクラブ洗粉が出てくる。

(明治四十一年)
一月二十日 月
(略)
 角の薬屋でクラブ洗粉を買つた、初めて洗粉なんか使うのだ、僕も案外野暮だよ。(洗粉は明朝から使ひ初めるのだ)僕はクラブ洗粉の香が好きだ。

 大手は明治20年11月3日群馬県生まれ。41年当時は、数え21歳で前年9月に早稲田大学英文科に入学している。その後もクラブ洗粉を使い続けたようで、43年1月28日の条に「金五銭クラブ洗粉」、44年9月25日の条に「クラブ洗粉 金拾二銭」とある。
 戦前の青少年にはよくあることだが、この頃の大手は美少年志向であった。

(明治四十一年)
一月感想録
(略)
 僕は今まで女を恋したことがない。美しいと思う、共に寝たいと思う、けれど僕が少年を恋したやうに熱烈な清い情ではなかつた。只一度見て忘れられない吉次さん*1の面影や早稲田辺りの君に比すれば僕にとつて女は何の執着もない、煙のやうに姿は消えてるのだ。一月廿九日夜しるす。

 さて、クラブコスメチックス文化資料室では、8月2日(月)から9月30日(木)まで「コスメチックス広告ーー広告にみる大正ロマンと昭和モダン」展が開催される。楽しみですね。事前予約制。詳しくは、「ミュージアム - クラブコスメチックス」。 また、創業者中山太一をモデルにした高殿円「コスメの王様」が4月1日から産経新聞で連載中とのこと。中山が主役の小説とは凄い。
 なお、冒頭の写真の右側は家蔵の『健康時代』創刊号(実業之日本社昭和5年8月)の裏表紙である。

*1:全集1252頁の年譜への注によると、明治39年4月、磯部の実家で偶然見かけた5歳年下の美少年、吉川吉次。大手は、後の大正元年12月号の『朱欒』に初めての口語詩を吉川惣一郎の筆名で発表している。