神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

『荷風全集』別巻(岩波書店)の「書簡宛名解説索引」(中村良衛作製)への補足ーートム・リバーフィールド「出版人の饅頭本」『二級河川』に期待ーー

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 平成23年から25年にかけて親族の不幸があり、この間に出た本や論文に見落としが多い。『荷風全集』別巻(岩波書店平成23年11月)も未読であったので、読んでみた。頼まれたわけでもないのに、同書の「書簡宛名解説索引」(中村良衛作製)に補足してみよう。といっても、網羅的ではなく、生年又は没年が不詳とされていて、かつ、私があの参考図書に出ているだろうと予測できた人名だけ調べてみた。結果は、ほとんど判明できなかった。判明したのは、

稲葉熊野 明治35年生(『新聞人名辞典』3巻)
木村荘五 明治23年生、昭和48年没(「日記人名注・索引」『志賀直哉全集』16巻。国会図書館オンライン著者標目にも記載有)
菅竹浦 明治13年生(トム・リバーフィルード「雑誌『伝記』と「伝記研究家一覧」」『二級河川』15号。出典は、『伝記』(南光社)昭和11年4月号~9月号連載の「伝記研究家一覧」)。
杉野正甫 明治34年生(人事興信録データベースの8版(昭和3年7月))
中川泰蔵 明治3年生、昭和39年没(ネット上の「近代日本版画家名覧(1900-1945)」)
和田顕太郎 明治36年生(『出版文化人名辞典』1巻)

 このほか、中村は沢田卓爾を「1894-1956」としているが、生年については「英文学者澤田卓爾の経歴 - 神保町系オタオタ日記」、没年については「澤田卓爾の没年 - 神保町系オタオタ日記」を参照されたい。以上、若干の補足を書いてみた。荷風に関心のある皆様に届きますように。
 解明できなかったのは、

板倉勝麿 生没年未詳
鹿塩光貞 生没年未詳
川島益太郎 生没年未詳
木村嘉次 1900-?
酒井大助 生没年未詳
佐藤績 生没年未詳
田中秀吉 生没年未詳
中村孤村 生没年未詳
西村誠三郎 生没年未詳
練木準 1906?-1983
林保広 生没年未詳
平山清郎 生没年未詳
宮田新八郎 1904?-1970
宮田直太郎 生没年未詳
藪内清三 生没年未詳
湯浅光雄 1903?-1989

 このうち出版・新聞関係者は、鹿塩、木村、酒井、佐藤、田中、林、平山、宮田(新)である。
 ちょうど、トム・リバーフィールド「出版人の饅頭本(第2回)」*1が載った『二級河川』(金腐川宴游会、令和3年5月)が届いた。ありがとうございます。坂本金太郎(冨山房創業者坂本嘉次馬の長男)、斎藤雄吉(日栄社創業者)、桜井均(桜井書店創業者)、磯貝憲佑(煥乎堂代表取締役専務)、関戸恵美子(岩波書店編集者)、宮内久男(岩波書店編集者)、大西和男(社会思想社詩学社編集者)、能登恵美子(皓星社編集者)などの饅頭本の紹介である。リバーフィールド氏は、「約10年前に国立国会図書館/東京都立中央図書館/神奈川県立川崎図書館などに通って出版人の饅頭本を“総ざらい”して、そのほとんどに目を通した経験を持つ」という。私が解明できなかった出版人の饅頭本を発見してくれるかもしれない。

*1:貰ってないのか、第1回掲載の14号が見当たらない。