神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

竹久夢二や妖怪を愛した廣瀬南雄の『民間信仰の話』(法蔵館)ーー大阪古書会館で出口神暁の鬼洞文庫旧蔵書を発見ーー

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 今月も暢気に(?)大阪古書会館の「たにまち月いち古書即売会」へ。一番乗りした古本横丁では相変わらず争奪戦になったのと、店主の体調を反映してか品揃えがもう一つだったため、1冊も買わず終了。しかし、古書あじあ號や他の店で幾つか買えた。その中に関西大学図書館の鬼洞文庫(「鬼洞文庫 - 関西大学図書館」)で知られる出口神暁の旧蔵書があった。出口は、「大阪の郷土資料収集において第一人者を以て任じた」という。
 入手した本は、廣瀬南雄述・長崎法剣編『民間信仰の話』(法蔵館、大正15年11月初版・昭和2年2月再版)である。押された蔵書印は、蔵書印さん(@NIJL_collectors)のお手を煩わさずに読めた。国文研所蔵の「蔵書印DB鬼洞文庫」と同じ印である。
 国会図書館デジコレでネット公開されているので、目次の一部だけ挙げておこう。
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 「妖異観念に伴ふ民間信仰」が面白そうなので購入。廣瀬の経歴は、『月愛集:故廣瀬南雄教授詩歌集』(大谷大学短歌会・大谷大学詩話会、大正15年6月)によると次のとおりである。

明治20年12月 近江国浄久寺で誕生
明治44年7月 真宗大学卒業
大正2年9月 真宗大谷大学研究科入学「元祖吾祖及び蓮師に亘れる教義の研究」に従事
大正5年7月 卒業擬講の称号を受ける
大正8年 真宗大谷大学教授
大正12年4月 大谷大学教授
大正15年2月 大僧都に補せられる
同月9日 逝去

 入手した本は、廣瀬の死後の刊行ということになる。「はしがき」によれば、大正14年10月大谷派本願寺伝道講究院での講義「民間信仰の話」の速記を『真宗』に連載(大正15年1月~7月)。編者が廣瀬の生前のノートを整理して、速記の不完全な点を補い、上梓したという。
 前記『月愛集』に大正3年の「私は愛する」という驚くべき詩が載っていた。真に注目すべき人だ。大谷大学博物館で「廣瀬南雄展」を開催してほしいものである。

私は愛する
神話伝説を愛する。古き言葉を愛する。
(略)
観音、地蔵の民間信仰を愛する。
(略)
夢二の絵、太田三郎の絵を愛する。魔幻的な絵を愛する。妖怪を愛する。
タゴールの詩を愛する。エピクタテスを愛する。懐疑派の哲学を愛する。
(略)
ーー三、五、二九ーー