名著永嶺重敏『<読書国民>の誕生 明治30年代の活字メディアと読書文化』(日本エディタースクール出版部)が刊行されて15年。そろそろ文庫化してほしいものである。出すならちくま学芸文庫か講談社学術文庫か。解説はドカーンと書物蔵氏を抜擢してほしいなあ(*_*)
わしも永嶺氏に負けじと、列車文庫や船中読書について、「明治45年新橋発特急備え付けの列車文庫 - 神保町系オタオタ日記」や「船内で独歩全集を読む大川周明 - 神保町系オタオタ日記」を書いたことがある。今回は永嶺氏の言う「ホテル図書室」ネタを。
『萬象録 高橋箒庵日記』巻3(思文閣出版、昭和62年6月)によると、
(大正四年)
八月一日 日曜日
(略)
夕刻、富士屋ホテルに赴きて晩餐す、富士屋ホテル内には西洋人が読み了りて捨て置き行く小説其他の書物を保存し、書籍室にて滞在者の縦覧に供し居る由なれば、箒文社出版東都茶会記第一輯第二輯、我楽多籠、実業懺悔、井伊大老茶道談を右ホテル文庫に寄附せり。
今も箱根にある富士屋ホテルだね。客は外国人が多く、日本人でも上流の人に限られるだろう。挙がっている書名はすべて箒文社の発行で、中村勝麻呂編の『井伊大老茶道談』を除き、高橋の著書である。大正4年富士屋ホテルの書籍室にあった日本語の本の書名が数点とはいえ確認できた。ホテル図書室は蔵書目録が作られないだろうし、本の入れ替わりも激しそうだから、一部であっても蔵書の記録は珍しいだろう。
- 作者:永嶺 重敏
- 出版社/メーカー: 日本エディタースクール出版部
- 発売日: 2004/04
- メディア: 単行本