神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

裏表紙の社章から見た金港堂と博文館

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「蔵書印/出版広告」さん(@NIJL_collectors)がtwitterでやってくれました。博文館の出版物における裏表紙に印刷された社章の変遷。私も「戦前期における裏表紙に刷られた出版社ロゴマークの美学 - 神保町系オタオタ日記」で2種類紹介したが、10種類ほどもあるようだ。ここまで多いと社章なのかということになり、蔵書印さんはむしろ商標かとの疑問を呈している。
変遷を重ねた博文館の「社章」に比べて、金港堂の社章は変化が見られない。先月の大阪古書会館で厚生書店から300円で入手した高瀬花陵『自然の子』(金港堂、明治36年3月)。表紙が破れているし、タイトルがパッとしないので見逃すところだったが、念のため調べると・・・
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口絵が鏑木清方のようだし、金港堂の発行で裏表紙に社章があったので、よっしゃと購入。稲岡勝先生のゲスナー賞受賞作『明治出版史上の金港堂』(皓星社)の帯・カバーの折り返しにも印刷されている金港堂の社章である。二葉亭四迷『新編浮雲』1篇(金港堂、明治20年6月)にも使われたものだ。『自然の子』の例により、金港堂の場合は明治30年代半ばでも同じ社章が使われていたことが分かった。なお、同書の所蔵は秋田県立図書館ぐらいか。
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金港堂の社章は店主原亮三郎のイニシャルであるHとRを組み合わせたもので、博文館の社章のうち鳥を使ったものは社名が書かれたリボンに鳥が囲まれたものである。後者に似た社章を最近発見したので参考までに紹介しておこう。三密堂書店の100円均一台で見つけた佐々木亨編『佛教新演説』(明昇堂、明治24年7月)の裏表紙である。博文館の社章(右側)と一緒に写真を挙げておく。動物と社名の書かれたリボンの組み合わせ。どこが最初に始めたのか、洋書に類例があるのか、裏表紙の社章は奥深い世界である。
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