神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

2010-02-01から1ヶ月間の記事一覧

長崎県立長崎図書館を訪問したあの人

長崎県立長崎図書館で、「収蔵品展 県立長崎図書館を訪れた文人たち 〜大正期の芳名録を中心に〜」」が開催中。より詳しくは『県立長崎図書館50年史』の「芳名録抄」にある。幾人かを拾ってみると、 大正8年5月8日 柳田國男 10年8月22日 折口信夫 15年1月12…

ニコライ堂の図書館

天皇も観覧したという世田谷美術館の「内井昭蔵の思想と建築」展も今日まで。同美術館を設計した内井の祖父河村伊蔵は正教会の設計もした聖職者であった。ニコライの日記によると、 明治30年4月29日 副輔祭のモイセイ河村に図書館の管理も仕事に加えてくれる…

坪内祐三の父方の閨閥

坪内祐三の母方の曽祖父は井上通泰だが、父方にも立派な人物が多くいる。 坪内は、『極私的東京名所案内』で、手塚律蔵という洋学者が先祖の一人として、律蔵が佐倉藩の祐筆の娘と結婚し、二人の間にできた次女が、父方の祖母*1の母と書いている。これを詳し…

谷沢永一と晶文社の小野二郎

谷沢永一の二冊目の著作『近代日本文学史の構想』(1964年11月)は、晶文社から刊行。その経緯について、谷沢は『運を引き寄せる十の心得』(ベスト新書)で、 小野二郎の企画能力というのは、大変なもので、僕は、晶文社の本は全部買っているし、小野二郎の…

昭和10年のモラエス遺品展覧展

池内紀『二列目の人生 隠れた異才たち』(晶文社)は、大上宇市、島成園、モラエス、中谷巳次郎、西川義方、高頭式、秦豊吉、魚谷常吉、篁牛人、洲之内徹、尾形亀之助、福田蘭童、小野忠重、中尾佐助、早川良一郎、橋爪四郎をとりあげている。ハーンに比べて…

小野二郎と妻悦子の出会い

晶文社の小野二郎の年譜によると、小野は昭和32年6月2日島田謹二教授の講座の聴講生だった高平悦子と結婚。夫人との初対面は、同年1月に島田ゼミで佐藤春夫『田園の憂鬱』にちなむ土地(神奈川)を小旅行したときで、結婚に至るまで、毎週日曜日、四谷のイグ…

西谷勢之介と田内長太郎

田内長太郎については、昨年9月21日をはじめ何回か言及してきたが、富士正晴『竹内勝太郎の形成 手紙を読む』にも出てきた。 昭和4年6月5日付け「東京市外杉並区高円寺四十六番地 保原方「西谷の会」事務所」から竹内宛の書簡(印刷物)によると、病友西谷勢…

黒龍会とランカイ屋櫛引弓人

橋爪紳也『人生は博覧会 日本ランカイ屋列伝』(晶文社)は、「ランカイ屋」として、高村光雲、櫛引弓人、八日市屋清太郎、谷井友三郎、鍛冶藤信、油屋熊八、渡辺與八郎、森口留吉、土井万蔵、平沢嘉太郎、北岡善之助を紹介している。櫛引は、安政6年陸奥国…

晶文社と蟻二郎

蟻二郎は晶文社から三冊著作を刊行している。 『幻覚芸術 LSD、サイケデリック、ラヴ・イン』(1970年4月) 『変身 神話・民話・SF』(1973年9月) 『帰らざるウエスターン』(1977年11月)蟻と晶文社の小野二郎は、第16次『新思潮』(昭和36年2月創刊…

昭和60年まで生きていた七丈書院の渡辺新=八木新

三島由紀夫の処女短編集『花ざかりの森』を刊行した七丈書院の経営者渡辺新(戦後は八木新)。富士正晴は、八木に戦後再会したことを書いている。「私の三十歳」で、 この年(昭和18年)にわたしは、弘文堂を社長と衝突してやめ、間もなく東京の石書房、同じ…

富士正晴が顧問をした石書房

富士正晴が七丈書院とともに顧問をしていた石書房については、「spin-edition」に、竹内勝太郎『詩論』(昭和18年3月)の発行者は「前高一 東京市四谷区新宿一ノ八小原ビル」とある。この石書房も戦時中に企業整備されており、『戦後雑誌発掘』によると、宋…

東大附属図書館司書増田七郎は増田義一の養子だった

古川緑波、本名郁郎。明治36年8月13日、元貴族院議員で、医学博士の加藤照麿の六男として生まれる。加藤家は、長男以外は他家へ養子へ出す方針だったため、満鉄役員の古川家の養子となる。郁郎の弟七郎も、増田家の養子となり、のち東大附属図書館司書となる…

島田謹二と恩師木下杢太郎

小林信行「若き日の島田謹二先生--書誌の側面から」に記載がないので、補足しておく。 昭和8年10月来仙した島田と木下は再会している。木下の日記によると、 昭和8年10月18日 島田君歓迎の会(向山)に招かれたれど断る。 10月19日 夕四時ごろ島田謹二君訪ね…

岩国の「ほびっと」から京都の「ほんやら洞」へ

『sumus』13号のアンケートで「リコシェ」の柳ヶ瀬和江さんが挙げていた晶文社の『ほんやら洞の詩人たち』。同書の「夜話・自作詩朗読について」で有馬敲氏が、 「ほんやら洞」は、中尾ハジメ、早川正洋たちが、岩国へ「ほびっと」という喫茶店を作りに行っ…

満鉄鞍山図書館長佐竹英治=鈴木英治

鎌倉保育園の創立者佐竹音次郎の日誌に満鉄図書館に勤務していた佐竹英治なる人が出てきた。 大正8年12月3日 夜、大塚素氏(*)に面会し、英治の就職十三日頃満鉄図書館に決する由。*原注:同志社卒、巣鴨事件で教誨師をやめ満鉄理事勤務。 英治は佐竹英治…

図書館屋石崎又造流転

日比谷図書館の管理掛長秋岡梧郎の日誌によりますと、 昭和20年8月3日 住本主事補 帝大図書館(石崎氏ノ件) 8月4日 住本主事補 帝大石崎[又造]氏の件 8月22日 ○人事ニツキ住本君ニ連絡 (略) 2.石崎又蔵(ママ)氏へ至急再連絡ノコト 9月10日 ○石崎氏採用…

「どりこの」の時代 

戦前大日本雄弁会講談社から発売されていた「どりこの」については、石塚純一氏が、「「どりこの」の謎 薬と印刷物」(『比較文化論叢』22号)を書いている。「どりこの」そのものついては、それほど詳しいことは書かれていないが、講談社からは他にも「パミ…

国民新聞の篠原温亭

「新聞紙通信社一覧表 明治四十年十一月調査 警視廳」*1を見ると、国民新聞の記者として、結城禮一郎と篠原英喜の名前があるが、松下長平の名はない。松下が創立に尽力したという『桑港新聞』は明治39年創刊だが、その後40年の段階では、まだアメリカに滞在…

寒い時はタラコン酒をぐいっと

村井弦斎ゆかりのタラコン湯。とうとう三村竹清の日記中にも発見。 大正10年4月9日 午後入谷東運寺へ行く 桂嶺僧都胃腸あしゝときける故 タラコン酒を呈す 予は 近頃これをのミて いと心地よけれは也 村井衒才[ママ]ても利くもの也 まだまだ寒いが、タラコン…

『新・日本文壇史第一巻』における松下長平の後日談への補足

川西政明『新・日本文壇史第一巻 漱石の死』(岩波書店)には、妻俊子の不倫相手北原白秋を姦通罪で告訴した松下長平の後日談が、新知見として書かれている。 父親が出版社を経営していたように、長平もまた大正の終わりから昭和十九年まで日比谷出版社(東…

晶文社で盛り上げっているらしい。

daily-sumusに書いてあったが、ツイッターの「https://twitter.com/search?q=%23shobunsha」が、晶文社で盛り上がっているらしい。私の最初の晶文社本は、もちろん『暗黒世界のオデッセイ 筒井康隆一人十人全集』(1974年)である。ちなみに、蟻二郎は三冊も…

三島由紀夫『花ざかりの森』の発行者七丈書院の渡辺新(その2)

昭和59年10月柴田宵曲の『古句を観る』が岩波文庫から刊行。元版は七丈書院から昭和18年12月に刊行されている。森銑三は「閑談雑抄」*1の「古句を観る」において、文庫化について触れ、「それにしても、この本を出版した七丈書院の渡辺新氏に、その事を伝へ…

三島由紀夫『花ざかりの森』の発行者七丈書院の渡辺新

三島由紀夫は、昭和19年10月15日第一作品集『花ざかりの森』を刊行。発行者は、小石川区大塚窪町二四の七丈書院の渡辺新であった。この渡辺について、三島は、「私の遍歴時代」で、 処女短篇集「花ざかりの森」は昭和十九年の晩秋に、七丈書院といふ出版社か…

戦時下の図書館人波多野賢一

波多野賢一は、昭和6年4月に駿河台図書館長就任、17年9月には日比谷図書館事業掛長となる。戦時下の波多野を三田村鳶魚の日記で見てみよう。 昭和17年7月16日 ○駿[河]台図書館に波多野氏を訪ふ。 18年6月20日 日比谷図書館へ神道論攷、平田篤胤研究持参返済…

小野法順と自由人佐野碩

細江先生はとっくに読んでいる思われるが、岡村春彦『自由人佐野碩の生涯』に小野法順が出てきた。 碩は、この「滞在延期」を有効に生かした。彼はプロキノなどの日本の映画人たちや、元後藤新平の秘書で早川雪洲と深い接触があった小野法順という人の人脈を…

日記に見る戦前の中村天風

中村天風関係の本は経営書のコーナーに置かれているので、もはや霊術家というイメージはない。しかし、あの霊界廓清同志会編『破邪顕正 霊術と霊術家』(昭和3年6月)では、太霊道主元の田中守平を抑えてトップに紹介されている。同書は、統一哲医学会の中村…

飯森正芳をめぐるエピソード

朝日夕刊の「ニッポン人脈記」は、「大逆事件残照」の続きの「神と国家の間」が始まった。大逆事件の前後から大正昭和へ、まつろわぬ民の精神史を探るとのこと。またまた、黒岩さんの好きそうな企画である。第2回の昨日は、堺利彦の名前も出てきた。飯森正芳…

金尾種次郎の妹金尾夏子が訳した翻訳小説

玄文社から大正8年に刊行された2冊の翻訳小説『金か女か』(6月)と『名ばかりの妻』(1月)の訳者金尾夏子は、金尾文淵堂の金尾種次郎の妹であった。 徳冨蘆花の日記によると、 大正7年11月23日 金尾の妹は、翻訳を結城(*)の世話で出すと云ふ。金尾が泣…