昭和59年10月柴田宵曲の『古句を観る』が岩波文庫から刊行。元版は七丈書院から昭和18年12月に刊行されている。森銑三は「閑談雑抄」*1の「古句を観る」において、文庫化について触れ、「それにしても、この本を出版した七丈書院の渡辺新氏に、その事を伝へる事の出来ないのが遺憾この上もない」と書いている。この時点では、三島も柴田も亡くなっているから、渡辺の事を記憶しているのは、森ぐらいだっただろうか。
森自身も、七丈書院から『月夜車』(昭和18年12月)、『古書新説』(昭和19年6月)を刊行している。柴田の日記の昭和18・19年には森や柴田と渡辺との交流が散見されるが、そのうち幾つかを見てみよう。
昭和18年6月5日 渡辺新氏より電報あり、けふ夕より銀茶寮との事なれば五時頃市中へ出づ。(略)やがて森氏来、少しく話すほど穎原退蔵氏、山崎氏、渡辺氏来。
6月9日 先に七丈書院に行きて渡辺新氏に逢ふ。「古句を観る」の件なり。
10月12日 かへさ渋谷に出で鈴木を訪ふ。「古句を観る」の表紙成りしよし桧前氏まで電話ありし為なり。玉蜀黍を描ける図案明瞭にてよし。
19年4月24日 午後七丈書院に渡辺氏を訪ひ「昔の宿」の校正受取る。
「鈴木」は、『古句を観る』の装幀を担当した鈴木淳。「山崎氏」は、昭和19年に同書院から『俳諧の国』を刊行する山崎喜好か。『昔の宿』は、篠原温亭『昔の宿』(昭和19年7月発行)で、柴田が編集している。
渡辺については、その経歴の手がかりを得たので、判明すれば、(その3)をアップする予定。
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『新刊展望』1月号の「読者サロン」に、岡崎武志氏のファンという愛知県の70歳の女性が「『古本検定』に嵌る」を投稿。『読書の腕前』が「バイブルのような存在」というこの女性、数多い岡崎氏の女性ファンでも最高齢か。
川西政明『新・日本文壇史』(岩波書店)184頁「武林夢想庵」(誤)→「武林無想庵」(正)。黒岩さんに怒られそうな誤植である。それはともかく、面白く読めました。