神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

平凡社新書『書店の近代』(小田光雄著)中「円本時代と書店」から


   文学者や編集者の回想は無数にあるのだが、出版社の営業部の人間によって書かれた出版史は、牧野武夫の『雲か山か』の一冊しかないように見える。牧野武夫は岡茂雄の『本屋風情』にも登場しているが、この「出版うらばなし」とサブタイトルにある『雲か山か』は牧野武夫の人柄のせいか、ユーモアあふれる記述と明朗性によって、特異な出版史、書店史となっている。


(参考)同書は中公文庫、昭和51年刊行。未見。ブックオフの均一コーナーにないかなあ・・・
    
『本屋風情』(岡茂雄著)から
    
      ところが、この消息を御存知なかった岡田(桑三)さんが、電車で旧知の乾元社主牧野武夫氏に遇い、同氏に南方全集出版の希望があるのを知って渋沢(敬三)さんに伝え、渋沢さんにすぐ受け入れられたと聞いた。(中略)牧野氏は昭和の初め、中央公論社の京都支社(?)にあった時、翁の御著作集を希望したが果たせなかったということであり、翁逝去の前後には、中央公論社(牧野氏多分在勤)と南方家の間に、全集に関する交渉があったので、それらの因縁あっての申し込みとなったものとみえる。