神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

『父荷風』(永井永光著)から


   葬儀のときに、私は遺品の書籍を盗難から守るため、奥の部屋の本棚に五寸釘を打ちつけました。この作りつけの本棚は安普請で、裏はベニヤを張っただけのものでしたから、雨が漏って本がしみだらけでした。しかし『断腸亭日乗』の原本が入っていたので、これは気をつけなくてはと思ったのです。
   実際に物が盗まれました。ベレー帽と埋葬書で、犯人は市川のマーケットの古本屋でした。出棺のときの写真にも写っている人ですが、埋葬書だけは返してもらいました。埋葬書がないと焼き場で困るのです。