神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

平凡社ライブラリー『[定本][文藝]発禁本』(城市郎著)の「続発禁本」から


   一図書館員のブンザイで、国から命令されたわけでもないのに風教上宜しくないとばかりに、ある本の一般閲覧を禁止するということは、それが虚妄であろうとなかろうと戦後の民主主義の今日ではあり得ないことですが、上野図書館の当事者が新時代の男女学生の自由な雰囲気を描いた小杉天外の『魔界天風』の閲覧を得たり賢しとばかりに禁止したという事件があったのは明治40年、この時、島村抱月が文学は世間の道徳と矛盾する材料を避けるべしとするのか、と抗議文を発して世論の喚起をまったのは、筆禍史のなかで或いは筆禍史余話として看過できない一つの挿話です。