神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

図書館

戦時下の図書館人波多野賢一

波多野賢一は、昭和6年4月に駿河台図書館長就任、17年9月には日比谷図書館事業掛長となる。戦時下の波多野を三田村鳶魚の日記で見てみよう。 昭和17年7月16日 ○駿[河]台図書館に波多野氏を訪ふ。 18年6月20日 日比谷図書館へ神道論攷、平田篤胤研究持参返済…

坂西志保さんが好き

女性の司書というと、故人だが、坂西志保さんが著名な人の一人だろう。中公新書の『アメリカ議会図書館』で初めて名前を知ったような覚えがあったが、改めて見てみると、名前は出てくるものの、詳しい説明はない。むしろ、反町茂雄の『一古書肆の思い出2』…

ある建国大学生が見た新京特別市立図書館

西村十郎『樂久我記−満洲建国大学 わが学生時代の思ひ出−』にある図書館が出てきた。 昭和17年9月5日 午後図書館に赴いての勉強となつたが、火曜日の演習発表に備えての外出であつたのに目的に叶ふ書籍はなく、やつと二冊に眼を通したが、満鉄の付属図書館と…

菊水で飲む後の国会図書館副館長中井正一

京都帝国大学文学部講師で、戦後国会図書館副館長となる中井正一が、加古祐二郎の日記*1に出てくる。 昭和10年11月24日 夕から総長の古希の祝賀会をホテルで行う。済んでから、皆と河原町を歩いた。途中で、美学の中井氏*2と久しぶりに出くわす。 久しぶりに…

西田幾多郎の皇紀二千六百年記念図書館建設計画

日本図書館協会を中心とした館界による皇紀二千六百年記念図書館建設計画については、東條文規『図書館の政治学』に詳しいが、西田幾多郎はそれとは別に独自の考えを持っていたようだ。西田が出席した座談会「西田幾多郎を囲む座談会」『文藝春秋』第18巻第5…

京都書籍雑誌商組合立昭和図書館

これは先行研究がありそうだが、とりあえず情報提供。『京都書肆変遷史』(京都府書店商業組合、1994年11月)の「組合史年表(明治二十三年〜昭和二十年)」によると、 大正13年2月 定期総会に於いて、東宮殿下御成婚を記念として、記念図書館を建設すること…

戦時下に秘画を見る柳田國男たち

高橋誠一郎という人は、慶應の経済学の先生だったらしいが、浮世絵のコレクターでも知られている。現在、三井記念美術館で「夢と追憶の江戸−高橋誠一郎浮世絵コレクション名品展−」を開催中(今月23日まで)。この高橋所蔵の浮世絵を戦時中に柳田國男らが観…

財団法人日本文化中央聯盟による日本文化図書館設立計画

松本学が中心となって設立した*1文化団体に日本文化中央聯盟がある。『昭和十八年版日本文化団体年鑑』(日本文化中央聯盟、昭和18年12月)によると、 財団法人日本文化中央聯盟所在地 東京都麹町区内幸町二ノ一ノ三 大阪ビル新館八階設立の目的及事業 肇国…

図書館職員養成所長舟木重彦

広津和郎らと『奇蹟』を創刊した舟木重雄の弟で、小説家、独文学者の舟木重信宛書簡(『人間、この愛しきもの 舟木重信書簡集』)に重信の従弟舟木重彦が出てくる。中野重治の昭和26年3月25日付け書簡だが、 (略)さて、先日重彦君(1)のこと御知らせを受け…

徳島名物、正五角形の図書館五明文庫

誰ぞが豪語する図書館○○○500枚の中に、かつて徳島に存在した正五角形の図書館五明文庫は存在するだろうか。 鐵火鞭生「五角の図書館△四国の名物阿波の奇人▽」『読書之友』8号、大正元年12月1日から要約すると、 構造:1階が婦人閲覧室・児童閲覧室等、2階が…

長谷川天渓と大橋図書館

長谷川天渓の門下生だった田内長太郎は天渓の蔵書処分を托されていたという。 田内の「天渓先生の蔵書整理にあたつて」(『書物展望』11巻5号、昭和16年5月)によると、 (略)中でも、古本屋の人達からしきりに訊ねられた明治末期から大正期へかけてわが国…

東京貸出図書館という名の貸本屋

明治末期から大正初期にかけて「東京貸出図書館」という会員制の私設図書館があったらしい。「東京貸出図書館」(無署名)『読書之友』2巻11号(読売新聞読書会、大正2年11月)によると、 銀座四丁目の角なる書肆教文館に沿ふて曲ると、ガラス窓にTOKYO…

大東亜図書館党 明日の図書館内閣閣僚名簿

総理 書物蔵 副総理・図書館の殿堂相 谷沢永一 官房長官 友人A 大東亜博物館相 荒俣宏 奇人図書館相 黒岩比佐子 私小説図書館相 小谷野敦 京都文学館構想担当相 林哲夫 広告図書館相 南陀楼綾繁 大東亜図書館相 岡村敬二 図書館防衛相 有川浩 トンデモ図書…

宮本常一の日記から見る戦後図書館事情

宮本常一の日記*1に出てくる戦後の図書館を見てみる。 昭和21年4月15日 それより西宮に行き田岡氏とはなす。田岡氏図書館長となる。 「田岡氏」は田岡香逸、「図書館」は西宮市立図書館と思われる。 昭和22年4月21日 バスで鳥取へ出て更に若桜行のバスにのり…

新党大東亜図書館党設立宣言

館界の現状を憂う誰ぞが、たうとう立ち上がった。 大東亜図書館党マニフェスト(抄)・国会図書館長に紀田順一郎氏を招く。 ・公立図書館の無い市町村に国費で建設する。 ・図書館の規模に応じた必置の司書数を定める。 ・大東亜図書館に身を捧げた図書館員…

幻の探偵小説図書館

『延原謙探偵小説選』(論創社、2007年12月)所収の「探偵小説図書館設立私案」*1を要約すると、 設立場所:地代五十銭を予定するため、一例として牛込矢来町程度の場所。借地九十坪。 建物:鉄筋コンクリート三階建、百八十坪。 一階:定員二百名の宴会場。…

中田邦造と自由大学

大正10年11月開講された自由大学で中田邦造が講師をしている。山口和宏『土田杏村の近代』(ぺりかん社、2004年3月)巻末所載の「資料自由大学講座一覧」から中田が講師を務めた分を拾うと、 1.信濃(上田)自由大学 開講年月日 日数 講座 会場 1923.11.5 6…

石川県立図書館主席司書牧太喜松

昭和6年4月結成された新興仏教青年同盟については稲垣真美『仏陀を背負いて街頭へ−妹尾義郎と新興仏教青年同盟−』(岩波新書、1974年4月)に詳しい。同書94頁によると、 金沢の支部長山本清嗣(一九〇〇−)は、地元紙『北国新聞』の記者で、政治部長のポスト…

北京近代科学図書館員菊池租

「太田宇之助日記」*1には、元北京近代科学図書館員で、国際文化振興会調査部に属する菊池租らしき人が出てくる。 昭和20年2月17日 国際文化振興会に、近日打合せの為めに帰国する菊地君を訪ふと、海軍報道部の援助月五十万元を得て、支那人獲得の為めに小集…

中公新書の図書館本

中公新書の図書館本というと、藤野幸雄『アメリカ議会図書館−−世界最大の情報センター』(1998年7月)、モスタファ・エル=アバディ『古代アレクサンドリア図書館−−よみがえる知の宝庫』(1991年1月)がすぐに浮かんでくるが、このほかににも、E・H・コー…

『1Q84』の貸し出しを待つこと1281人

横浜市立図書館で村上春樹『1Q84』の予約状況を見ると、1281人にもなっている。日本人は行列に並ぶのが好きらしいが、図書館本の貸出し待ちも好きらしい。後ろの方の人は、うっかりしたら順番が回ってくるのが、1〜2年後になるが、連絡があった頃…

図書館再建80年

東京大学総合図書館で「常設展 内田祥三と図書館再建80年」をやっていたらしい。終わってしもうた。常設展だから、あまりたいした規模ではなかったか。 - 今村太朗「図書館こぼれ話(2) 人物から見た図書館史−中島猶治郎−」『時計台』77号(関西学院大学図…

神戸市立図書館の橋本正治

『横浜開港資料館紀要』所収の「太田宇之助日記」に、戦前の神戸市立図書館の職員が出てくる。 昭和16年9月4日 午前九時半三宮着。池田宅を訪ひ、神戸図書館に石川君等三人を訪ひ、久々にて快談す。 19年1月28日 時間が余ったので、久々で橋本正治君を市立図…

戦時下に再燃する図書館問題

たまには休刊日にしようかと思ったが、図書館ネタを投入。 柴田宵曲の日記(「柴田宵曲翁日録抄」)に謎の「図書館問題」なる記述がある。 昭和20年2月28日 午後森氏来。けふ日比谷図書館に寄られしよし。 4月1日 午後日本タイムスに校正届け日比谷図書館に…

上山草人と共に踊るスメラ学者井上芳郎

井上芳郎。明治21年生まれ、早稲田大学政治経済科専門部中退後、坪内逍遥主宰の文藝協会研究所第二期生となるも、病気で中退(『慶應義塾図書館史』による。2006年7月8日参照)。「資料翻刻文藝協会研究所日誌」*1に、その井上の名前があった。明治43年7月13…

今井兼次とお茶の水図書館

今井兼次という建築家がいる。早稲田大学図書館(現、 早稲田大学會津八一記念博物館)、早稲田大学坪内博士記念演劇博物館などの設計や、戦前からシュタイナー建築に注目していたことなどで知られている。この今井の昭和16年の絵日誌が公刊されている。 昭…

さらば日比谷図書館

昨年創立100周年を迎えた日比谷図書館。開館までには、ちょっとしたトラブルがあったようだ。ジョン万次郎の長男中浜東一郎の日記によると、 明治41年4月1日 夜西次郎、秀俊来り曰ふ。日比谷公園内に建築中なる府[ママ]立図書館受負大工高木(大政)は、昨夜…

読書協会の松本とは、誰ぞ?

大蔵公望の日記に出てくる読書協会の松本とは・・・ 昭和8年3月27日 九時三〇分、研究室に行く。松本(読書協会)、大長(大森男紹介)、田畑来訪。来月より田畑を室におく事とす。月給三十円。 4月22日 一〇時三〇分、研究室に行く。 来室、長岡、篠崎、阪…

台北帝国大学附属図書館司書達の戦後

昭和20年8月、大日本帝国敗戦。すぐにでも内地へ引き揚げたい者が多かったであろうが、金関丈夫を始めとして、台北帝国大学の教官達の多くが留用されることとなる。同大学附属図書館の司書もまた、その仲間となった。 京都帝国大学経済学部を出た星野弘四(4…

慶應義塾図書館員井上芳郎と柳田國男の深い交流

慶應の窓際図書館員で『シュメル・バビロン社会史』の著者である井上芳郎については、2006年7月8日、同年9月21日に言及したが、『炭焼日記』にあるように柳田國男と親しかったようだ。柳田の年譜(『柳田国男伝別冊 年譜・書誌・索引』)にも井上の名前があ…