神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

西田幾多郎の皇紀二千六百年記念図書館建設計画


日本図書館協会を中心とした館界による皇紀二千六百年記念図書館建設計画については、東條文規『図書館の政治学』に詳しいが、西田幾多郎はそれとは別に独自の考えを持っていたようだ。西田が出席した座談会「西田幾多郎を囲む座談会」『文藝春秋』第18巻第5号(1939年3月)によると、

西田 私は誰かに話さうと思つてゐたのだがね。来年何か記念があるね。紀元二千六百年記念に東京に一大図書館といふものを計画する、さういふ案を私は有つて居るんだ。英国でも、ブリテイシユ・ミユージアム、ドイツ辺り矢張りベルリン大学の中に何かあるだらう。パリにも何かあるね。さういふものを二千六百年の神武記念に計画したらどうかと思つてゐる。完成には勿論何十年か掛らなければなるまい。併しその磯(ママ)石だけでも今の問題として大事なことだと思ふのです。
谷川(徹三)私もいつかも一寸その問題を取扱つたことがあるんです。上野の帝国図書館の本の総冊数、年経費はデンマーク国立図書館に劣るんです。
西田 本は内務省へ納めるあれだらう。あれが主なんだらう。


座談会の当該部分の小見出しには、「大図書館建設計画」とあるが、これは西田の計画というよりも、単なる思い付きかもしれない。しかし、西田は、1940年1月1日『読売新聞』の「創造だ!新しい世界へ」*1でも、

街の好学の士のため研究場を提供する大図書館のないことを残念に思つてゐる。上野の図書館など子供の図書館だ。紀元二千六百年の記念事業の一ツに是非とも大図書館の建設をつけ加へて欲しい。


と書いている。よほど帝国図書館には不満があったらしい。

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12月17日(木)に黒岩さんとナンダロウさんのトーク「古本が先か? 仕事が先か?」が古書ほうろうであるらしい。→「http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/20091112 」←黒岩さんは出演できなくなったらしい。


11月27日(金)には、中野三敏先生(九州大学名誉教授)による「古書販売目録の面白さ」の講演が、九段生涯学習館であるらしい。 →「http://www.library.chiyoda.tokyo.jp/guidance/kosyomoku_omoshiro.html

*1:引用は、座談会とも『西田幾多郎全集第二十四巻』岩波書店、2009年3月による。