高橋誠一郎という人は、慶應の経済学の先生だったらしいが、浮世絵のコレクターでも知られている。現在、三井記念美術館で「夢と追憶の江戸−高橋誠一郎浮世絵コレクション名品展−」を開催中(今月23日まで)。この高橋所蔵の浮世絵を戦時中に柳田國男らが観覧している。『国民学術協会の記録』の「月例評議員会における講話の開催」によると、昭和18年4月1日、大磯の高橋誠一郎邸で長谷川如是閑、正宗白鳥、桑木厳翼、穂積重遠、市河三喜、三木清、芦田均、柳田國男の諸氏が浮世絵を見せてもらったという。
戦時下とはいえ、おっさんが集まったら学術的な浮世絵だけではなく、エッチな浮世絵も見ただろうと思ったら、そのとおりであった。同書にも引用されているが、雨宮庸蔵の『偲ぶ草 ジャーナリスト六十年』所収の「国民学術協会の成立」によると、
山荘のあるじは、さらに私たちを薄明りの別室に招じて江戸三百年の文化爛熟のうちに咲いた逸楽沈酔の秘画いわゆる十二カ月もの何巻かを見せてくれた。さすがに菱川師宣の吉原ものなどを含む寛政以前のもので、天保嘉永あたりの低劣なものではなかった。(略)
それはともかく、とりだされた秘画の中には昭和にはいってからの新聞社会種に取材した強姦などの秘戯現場を描いたものも散見された。恐らく売りつけられたものであろう。
なぜ元中央公論社の雨宮が参加しているのかというと、この財団法人国民学術協会は、昭和15年2月同社が母体となって設立した民間アカデミーで、雨宮は同社を退社後、同協会の主事を務めていたからである。柳田も高橋も協会の理事*1であった*2。
協会が行っていた事業に国民学術協会賞があって、昭和19年度の同賞の受賞は、
・清水三男『日本中世の村落』
・若月保治『人形浄瑠璃史研究』
・井上芳郎『シュメル・バビロン社会史』*3
2006年9月21日に言及したが、この表彰式には柳田も出席している。
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今年も谷崎潤一郎関係のニュースが→「http://www.rakutai.jp/news/today/001.html」