神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

東京貸出図書館という名の貸本屋


明治末期から大正初期にかけて「東京貸出図書館」という会員制の私設図書館があったらしい。「東京貸出図書館」(無署名)『読書之友』2巻11号(読売新聞読書会、大正2年11月)によると、

銀座四丁目の角なる書肆教文館に沿ふて曲ると、ガラス窓にTOKYO LENDING LIBRARYと金字で書かれてある、その手前の入口の扉を押すと四辺に洋書物をぎつしり詰めた書棚がずつと並んでゐる、事務を取る人が居て、そこの会員になつてゐる人は随意に書物を選択して貸[ママ]りて行く事が出来る。


以下、要約すると、

蔵書:洋書のみ三千五百冊。ほとんどが小説で、歴史、旅行記事、書簡類(西洋人による日本案内記)、児童書もある。


会費:年会費七円で一度に二冊まで借りられる。地方の人は、年五円で郵送可(ただし、送料は自己負担)。


会員数:八十五名。うち、日本人は二名。男性より女性の方が多い。


会長:英国大使館リリーグリーン夫人*1
副会長:三宮男爵夫人


開館日・時間:日曜と大祭日を除き、毎日十時から五時まで。


場所:かつては、教文館の二階にあったが、明治45年の春頃一階に移った。


創立時期:明治四十一年か四十二年頃


「目録は各自に配付」とあるので、目録が出現することもあるかもしれない。認可を受けた正式な図書館ではなく、貸本屋のようなものではないかと思われるが、図書館史上における位置付けは畏友書物蔵さんにおまかせしよう。私としては、副会長の三宮男爵夫人に関心がある。『初版大日本婦人録』(婦女通信社、明治41年7月)に、「三宮八重野子」と立項され、「弘化四年四月三日生、亡男爵三宮義胤氏夫人△英国龍動府ウイリアム、シエヰノア女」とある人ではないかと思われる。


(参考)明治33年3月17日付け読売新聞に、「東京貸出図書館設立の計画」の見出しで、馬越恭平らが株式会社貸出図書館設立の計画中である旨の記載があるが、時期が離れているので無関係か。

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連休初日。明治村では黒岩さんの講演があるが、秋晴れのようでよかった(「http://www.meijimura.com/event/aki09-3.asp#02」)。同村は、何年か前に1日がかりで全部見てまわった。もはやそんな体力はないので、もう一度行くとしたら、帝国ホテルや三重県庁など幾つかに絞ることになるだろう。売店で図録や噂の『明治村通信』は売っておらず、『明治村評判帖』ぐらいしかなく、がっかりした覚えがある。

*1:大正2年2月に着任したイギリス大使はグリーンという(『増補改訂普及版 来日西洋人名事典』)。