神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

徳島名物、正五角形の図書館五明文庫

誰ぞが豪語する図書館○○○500枚の中に、かつて徳島に存在した正五角形の図書館五明文庫は存在するだろうか。
鐵火鞭生「五角の図書館△四国の名物阿波の奇人▽」『読書之友』8号、大正元年12月1日から要約すると、

構造:1階が婦人閲覧室・児童閲覧室等、2階が通常閲覧室。正五角の建物。
来歴:明治35年阿波郡林村大字西林村五明の尋常小学校校長柏木直平が校舎の一部を借りて文庫を開設したのが始まり。その後、徳島市西新町の天野亀吉に交渉し、永久無料で現在地を貸与されることとなり、40年末から文庫の建築を開始し、44年完成。
工費:4,500余円
蔵書数:約3万冊、他に参考品2,800余り。


開設者の柏木は、四十幾つの男盛り。五明出身、県の師範学校を卒業後、明治30年母校五明尋常小学校校長となるも、片手間では図書館事業はできぬと、教職を退き、42年から図書館に全力を注いだという*1。独身かと思いきや、母とともに、妻も事業を助けているという。蔵書集めには苦労したようで、

この事を思ひ立つてからは毎日々々テクテクと家家を廻つて、破れた本でも厭はないからと寄贈を求めたが、始めは人々が怪しんで中々出さなかつたが後には皆争つて古本を寄贈するやうになつた。処が、警察の方でもこれを怪しみ一時は巡査を尾行させたり取調べたりしたが、だんだんその熱心さが判つて却つて敬意を払ふまでになつた。


発行元の読売新聞読書会の会員の寄稿なので、内容の正確さの保証はないが、面白そうな図書館である。

*1:阿波町史』によれば、柏木の五明尋常小学校の校長就任は明治31年8月、勤務年月は6年8月である。