神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

2021-07-01から1ヶ月間の記事一覧

昭和8年度京都帝国大学工学部土木工学科卒業生の同窓会誌『恒友会誌』ーー帝国日本の土木技術者たちーー

昨年の秋無事に開催された知恩寺秋の古本まつりで「indigo book」の均一台から見つけた『恒友会誌』創刊号(恒友会、昭和9年9月)。62頁、非売品。恒友会は、会則を見ると昭和8年度京都帝国大学工学部土木工学科卒業生及び之に準じる者で構成される。会の命名は…

ゴルドン夫人が建てた高野山奥之院の大秦景教流行中国碑のレプリカーー『宗教文芸の言説と環境』(笠間書院)と家蔵の宗教絵葉書からーー

シリーズ「日本文学の展望を拓く3」(笠間書院)は、小峯和明監修・原克昭編『宗教文芸の言説と環境』。コラムに奥山直司「物言う石ーーE・A・ゴルドンと高野山の景教碑レプリカーー」があった。ゴルドン夫人が明治44年高野山に建てた「大秦景教流行中国碑」(景教碑…

昭和13年京都帝国大学総長濱田耕作の追悼会で太田喜二郎のスケッチ画を観ていた大場磐雄ーー植田彩芳子「太田喜二郎研究:その画業と生涯」への補足ーー

「古本が古本を呼ぶ」(by 高橋輝次)と言われるが、「展覧会が展覧会が呼ぶ」こともある。平成28年7月から9月まで京都文化博物館で「アートと考古学 物の声、土の声を聴け」展が開催された。ここで展示された考古学者濱田耕作による昭和8年の石舞台古墳調査…

大東亜学術協会の機関誌『学海』ーー敗戦を巧みに生き延びた戦時下の雑誌ーー

『学海』2巻7号(秋田屋仮事務所、昭和20年8月10日)は、2年前知恩寺の古本まつりでヨドニカ文庫から300円で購入。和本の均一箱に入っていたような気がする。目次を挙げておく。 「青山光二が描いた京都学派の奇人土井虎賀壽と『鹿野治助日記』 - 神保町系オ…

竹久夢二や妖怪を愛した廣瀬南雄の『民間信仰の話』(法蔵館)ーー大阪古書会館で出口神暁の鬼洞文庫旧蔵書を発見ーー

今月も暢気に(?)大阪古書会館の「たにまち月いち古書即売会」へ。一番乗りした古本横丁では相変わらず争奪戦になったのと、店主の体調を反映してか品揃えがもう一つだったため、1冊も買わず終了。しかし、古書あじあ號や他の店で幾つか買えた。その中に関西…

昭和17年民族学者杉浦健一が佐藤生活館で南方派遣者(?)向けの講演会ーースメラ学塾の南方指導者講座との関係ーー

山路勝彦編著『日本の人類学:植民地主義、異文化研究、学術調査の歴史』(関西学院大学出版会、平成23年8月)に、民族学者で元南洋庁嘱託の杉浦健一が昭和17年7月3日佐藤生活館で行った講演(民族学よりする原住民に対する対策)の原稿が翻刻されている。同館に…

大正12年装幀家としてデビューしていたマヴォイスト牧寿雄ーー五十殿利治「関西『マヴォ』について:牧寿雄と『マヴォ』関西支部」への補足ーー

さて五十殿利治「関西『マヴォ』についてーー牧寿雄と『マヴォ』関西支部」*1に補足してみよう。五十殿先生は、牧寿雄について、生没年未詳で経歴も不明、『マヴォ』前後の記録だけが判明していることのすべてであるとしている。今回、牧が大正12年には装幀…

明治41年クラブ洗粉を使う大手拓次ーー8月からクラブコスメチックス文化資料室で「コスメチックス広告 広告にみる大正ロマンと昭和モダン」展ーー

『大手拓次全集』5巻(白凰社、昭和46年8月)に、明治39年に販売開始されたクラブ洗粉が出てくる。 (明治四十一年) 一月二十日 月 (略) 角の薬屋でクラブ洗粉を買つた、初めて洗粉なんか使うのだ、僕も案外野暮だよ。(洗粉は明朝から使ひ初めるのだ)僕はクラブ…

大嘉澤田商店の澤田孝三が創刊した服飾研究雑誌『真美』と上野伊三郎・上野リチ夫妻ーー11月から京都国立近代美術館で「上野リチ展」開催ー

南木芳太郎に届いた古書目録『ほんの趣味』については、「『南木芳太郎日記』に記録された岡山の古書店雅楽堂(シゲオ書店)の古書目録『ほんの趣味』ーー岡山市高砂町の古書店主矢部繁雄ーー - 神保町系オタオタ日記」で紹介したところである。今回は、同じく…

工繊大の研究者の皆様、『マヴォ』同人牧寿雄の消息を調べて<(_ _)>ーー牧寿雄は分離派建築会作品展を観たかーー

内田美術書肆(のち内田アート)の創立者内田基一から田中緑紅宛昭和6年の年賀状を持っている。同書店は、『京都書肆変遷史』によると、大正8年京都市上京区で創業、内田は昭和46年に84歳で亡くなっている。この内田が昭和2年11月に刊行した『新希臘派模様』と…

大正4年第三高等学校教授栗原基が南洋諸島で冒険ダン吉のモデル森小弁や女性宣教師ホッピンに遭遇

『文藝春秋』8月号に後藤正治「古書店は死なず」が載っている。どこの古書店の話かというと、大津市比叡平に移転した書砦・梁山泊京都店である。「はて、はるばる比叡の山道を分け入る客ありやと思うのだが、『お客は自然とやって来るものです』と悠然たる構…

昭和14年南洋パラオに出現した帝国日本の書籍館ーー畑井新喜司パラオ熱帯生物研究所長は大東亜書籍館の夢を見るかーー

坂野徹『〈島〉の科学者:パラオ熱帯生物研究所と帝国日本の南洋研究』(勁草書房、令和元年6月)に、「書籍館」が出てくる。パラオ研の所長畑井新喜司が昭和13年に東北帝国大学を退官したことを記念に、翌年12月研究所に図書庫が作られた。畑井はそれを「書籍館」…

メディア史研究会でブレニナ・ユリア先生の「明治期の仏教と印刷メディアーー立正安国会の機関誌『妙宗』(1897-1910)に着目してーー」開催

立正安国会(のち国柱会)の機関誌『妙宗』(獅子王文庫)については、「日蓮上人研究会旧蔵の『妙宗』7編7号(師子王文庫、明治37年9月) - 神保町系オタオタ日記」で紹介したところである。その時は写真を挙げなかったが、今回挙げておく。蔵書印さんのお陰で解明…

南天堂、牧野四子吉、そして梅棹忠夫へーー船木拓生『侠気の生態学:牧野四子吉と文子の鮮やかな日々』(ぷねうま舎)への補足ーー

船木拓生『侠気の生態学:牧野四子吉と文子の鮮やかな日々』(ぷねうま舎、令和3年4月)。たまたま読んだら面白かった。新刊だが、善行堂に置かれるべき一冊だろう。昭和4年牧野四子吉は、人妻文子*1と東京から京都へ駆け落ちする。東京では百瀬晋に兄事し、南…

京都帝国大学の学知ーー『田代善太郎日記』で見る京大山脈(戸田正三、今西錦司、三木茂、駒井卓ら)ーー

「興亜民族生活科学研究所の創立者戸田正三と石田英一郎ーー本田靖春『評伝今西錦司』の誤りーー - 神保町系オタオタ日記」で紹介した興亜民族生活科学研究所の所長となる戸田正三や所員になる今西錦司、三木茂が出てくる日記がある。京都帝国大学理学部植物学…

帝国日本の地質屋流転ーー地質学者永井浩三はパラオ熱帯生物研究所を訪問したかーー

ここにシルヴァン書房から300円で買った葉書がある。写真のように昭和7年1月6日付けで「赤ん坊の居る窓辺の風景」が描かれた拙い絵である。これも誰も買いそうもない葉書である。私は、発信者の住所が「奉天満鉄附属地」とあって満鉄の関係者らしいことと、宛名…