神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

2005-01-01から1年間の記事一覧

『文庫本福袋』(坪内祐三著)中「谷沢永一『私の「そう・うつ60年」撃退法』」から

ところで谷沢氏の代表作といえば読書コラム『紙つぶて』であるが、私はかつてある編集者から、谷沢氏が毎週毎週、あのクオリティーの高い、しかもわずか六百字のコラムを、書き続けることによって、「うつ」病が悪化したと聞かされ、それを信じたことがあっ…

『松本清帳と木々高太郎』(山梨県立文学館)から

私は33歳のころまで乏しい蔵書を何度か古本屋に売ったことはあるが、この「小説研究十六講」だけは手放せず、敗色濃厚な戦局で兵隊にとられたときも、家の者にかたく保存を云いつけて、無事に還ったときの再会をたのしみにしたものだ。今も手垢にまみれた…

『前橋が生んだ現代小説家−司修・豊田有恒・樋口有介が描いた前橋と作品−』(前橋文学館)中「化石化したユートピア、前橋」(書き下ろしエッセイ)から

百冊以上の本を書いたが、前橋が登場する物語は多くない。 気恥ずかしくて、書けないのである。シリーズで書いていたヤマトタケルでは「毛の国のヤマトタケル」など、予告したこともあるのだが、実現しない。たぶん、永遠に書けないだろう。僅か数編だけ、前…

平凡社新書『書店の近代』(小田光雄著)中「円本時代と書店」から

文学者や編集者の回想は無数にあるのだが、出版社の営業部の人間によって書かれた出版史は、牧野武夫の『雲か山か』の一冊しかないように見える。牧野武夫は岡茂雄の『本屋風情』にも登場しているが、この「出版うらばなし」とサブタイトルにある『雲か山か…

岩波新書『日本近代史事始め』(大久保利謙著)から

国会図書館で外部の専門家に委嘱していた図書評価委員は、和書は朝倉屋でした。その評価をまた、収蔵者として検討するわけです。頼んでおくと、憲政資料室向きの史料を集めてくれるんです。たとえば旧華族会館の文書を建物が壊されたとき、屑屋に売ったもの…

『私の神保町』(紀田順一郎著)から

セドリとは業者が仲間の店をまわって安いと思うものを探し出し、”向き”の店へ売るか市場へ出品して口銭をとることで、専門家としてはほとんどいなくなってしまった。 (参考)初出は1966年。今や、にわかセドラーだらけとなってしまった・・・ なおかつ…

なにわ塾叢書『たいまつの火 近代史研究から照らし出されるもの』から(梅渓昇著)

図書館にしても、外国の図書館員は非常にハイレベルで、中には教授よりよほどしっかりしている人もいます。日本の図書館も若い人をもっと外国へ留学させて、そういう優れたライブラリアンを育てるべきだと思いますが、なかなかうまくいきません。 日本英学史…

『弘文荘 反町茂雄氏の人と仕事』(文車の会編)中「烈しい一生」(八木壮一著)から

東大で新人会に入っておられたかどうか、私ども下司の世界では関心の在るところであった。新人会名簿には、反町茂雄の名はない。しかし、最近刊行された石堂清倫著『中野重治と社会主義』にはカウツキーの「経済学原理」読書会に反町さんは熱心に通っていた…

『青年小泉信三の日記』(小泉信三著)から

明治44年1月24日 教員室で永井荷風さんに阿部から頼まれた「ふらんす物語」の事を聞く。 同月30日 今日「ふらんす物語」の「巴里のわかれ」「黄昏の地中海」と「三田文学」所載、国枝史郎(原注:1886−1943。『神州纐纈城』の作者も、この年…

『文庫本福袋』(坪内祐三著)から

ようやく寿岳文章『新曲』が文庫本で読める日がやって来た。 いよいよ私はこの大古典を通読できる出来るのだろうか。とりあえずまず、第Ⅰ巻の「地獄篇」を買ってみることにする。 坪内祐三氏が、『神曲』を通読できるのも大賀のおかげということになるか。

京都大学広報誌「紅萠第6号」中「附属図書館のモノ ダンテ研究への多大な貢献」(赤井規晃著)から

附属図書館が所蔵する文庫のひとつに旭江(きょっこう)文庫と呼ばれるダンテ文献のコレクションがある。日本における民芸運動の父・柳宗悦デザインのex libris(蔵書票)でも有名なこの文庫は、市井のダンテ学者大賀壽吉(おおがじゅきち)(1865〜19…

岩波文庫『新編明治人物夜話』(森銑三著)中「夏目漱石と文芸委員会」から

『ドンキホーテ』などという古めかしいものの翻訳は、島村抱月には、ありがたくない仕事であった。それで了解は得て置いたのであろうが、片上伸に代訳せしめて、やや後れはしたけれども、その方の訳も完成を告げ、これは植竹書院から刊行した。菊版の大冊で…

岩波新書『国文学五十年』(高木市之助著)から

いつだったか、三高入学の時にどういう本を読んだか、入学試験の準備に何をやったかということをアンケート風にさる受験誌に書かされた。末川博さんと金森徳次郎さんと私の三人が書いたんですが、三人とも受験時代に何を勉強したかということよりもほかの話…

平凡社ライブラリー『[定本][文藝]発禁本』(城市郎著)の「続発禁本」から

一図書館員のブンザイで、国から命令されたわけでもないのに風教上宜しくないとばかりに、ある本の一般閲覧を禁止するということは、それが虚妄であろうとなかろうと戦後の民主主義の今日ではあり得ないことですが、上野図書館の当事者が新時代の男女学生の…

出久根達郎

読売新聞朝刊(11月3日付け大阪版) 少年時代、貧乏で本を買えなかったため、移動図書館に父親が連れて行ってくれた。1人3冊の本を架空名義を使ってまで借り、漱石全集や江戸川乱歩全集を読んだ。

立花隆

文春文庫『ぼくはこんな本を読んできた』(立花隆著)から (小学校)3年になった頃、近所の人から江戸川乱歩の探偵小説を見せて貰ったのが病み付きになり、それ以来探偵小説、冒険小説、推理小説、怪奇小説、剣豪小説、捕物帖のたぐいに熱中し次から次へと…

荒俣宏

中公文庫『稀書自慢 紙の極楽』(荒俣宏著)から だから、今でも思い出せる最古の記憶は、鶯谷の古本屋のうす暗い電灯の下で、山川惣治の『少年ケニア』だとか江戸川乱歩の『少年探偵団』シリーズ、それに手塚治虫の『ジャングル大帝』だとかを掻きまわして…

鶴見俊輔

「読書年譜」(『鶴見俊輔集12 読書回想』収録)中「1932年(昭和7年)」から それらよりももっと心をひかれたのは江戸川乱歩の小説で、『人間豹』『緑衣の鬼』が心に残っている。それらは性的な関心をひきつけたのだが、邦枝完二『お伝地獄』もうそ…

青木正美

『古本屋五十年』(青木正美著)から 私の経験でも昭和22、3年の中学生の頃は、下町の古本屋を歩き廻り、やっとためた二百円の保証金を積み、『少年講談』や江戸川乱歩の『怪人二十面相』などを借りて読んだ。

川村湊

集英社新書『日本の異端文学』(川村湊著)から 寝床にこっそり持ち込んで、夢中になって読んだ江戸川乱歩の『屋根裏の散歩者』や『人間椅子』(ともに1925年)や『パノラマ島奇談』(1926年)といった小説は、確かに「異端」の匂いに満ちていた。

寅書房

『雑読系』(坪内祐三著)から たぶん三千冊以上はある私の文庫コレクションの中で、この一冊というベスト1を決めるのは難しいけれど、ベスト10を選ぶなら、その内の一冊に絶対入るのが、旺文社文庫の小山清『落穂拾い・雪の宿』だ。 巻末をめくると「寅…

古書現世

『三都古書店グラフティ』(池谷伊佐夫著)から 神保町で書誌関係といえば、小宮山書店、梓書房、波多野書店あたりが揃っている。早稲田なら古書現世か。

天牛書店

『本はこうして選ぶ買う』(谷沢永一著)から (市は)取り引きだけでなく、業者にとっては知識を仕込む道場とも言えよう。萩ノ茶屋に出店している津田喜代獅さんは、私は市を欠かしたことはおまへんで、と自慢していた。確かに然りで、市へ一遍も出たことの…

『本間久雄日記』

『本間久雄日記』(平田耀子編著/2005.9/松柏社)の解説中 「三『日記』に現れる本間久雄の交友関係(四)出版・古書関係者」から 洋書について、早稲田界隈でも良書がおいてあることがあった。当時の文学部よりほど近い進省堂など古書店をよくのぞき、和洋…

東京パック

『幻影の蔵』(新保博久・山前譲編著)から たった三号だけ編集した「東京パック」でも自ら風刺漫画を描いたりしている。乱歩自身は絵心について語っていないようだが、その方面の才能も少なからずあった。 (参考)11月23日まで「さいたま市立漫画会館…

柳田國男と平井隆太郎

定本柳田國男全集月報31(第26巻)中 「柳田学との出会い」(神島二郎・立教大学教授)から 私が柳田さんの名前を知ったのは、一高在学中のことで、当時私は古代日本人の信仰を研究したいと考えて、いろいろ書物をあさって読んでおりましたところ、同級…

「はてな」へのデビュー!

基本的に、読んだ本で気になる一節を記録する場とさせていただきます。 引用文への私のコメントは気が向いたときだけ付けます。 脇村義太郎『東西書肆街考』(岩波新書。1979年6月)から 戦後、寺町通りで新本屋を開業したものもいくらかあったが、今日…