神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

『近代仏教』31号に『「日本心霊学会」研究』(人文書院)の書評(木村悠之介)


 昨年5月東北大学でシンポジウム「近代仏教史とオカルト研究ー吉永進一が残した課題の可能性ー」が開催された。京都でやってくれたらのぞきに行けたが、仙台では中々厳しいものがあった。しかし、幸い先月刊行された『近代仏教』31号(日本近代仏教史研究会)に記録が掲載されたようである。昨年の30号(冒頭の写真)掲載の「追悼 吉永進一氏(一九五七~二〇二二)」に続き、吉永さん関係の記事が読めて嬉しい。吉永さんの著編書への書評も2本掲載された。
 早速注文したがいつ届くか不明なところ、執筆者特典?で栗田英彦編『「日本心霊学会」研究:霊術団体から学術出版への道』(人文書院、令和4年10月)の書評を読ませていただけた。評者は木村悠之介氏である。
 木村さんに初めて会ったのは、平成31年1月の「限界宗教雑誌バトル」であった。『神道と図書館』*1の執筆者ですと挨拶された。木村さんの発表は、神風会を創立した宮井鐘次郎関係の雑誌だった。私は、研究者でもないのに吉永さんにコメンテーターに引っ張り出されていた。私が「神風会は、安藤礼二先生が『折口信夫が本荘幽蘭に出会った団体』と紹介してますね。私は宮井の経歴を調べたことがありますが、不詳でした。経歴は分かりましたか」と発言すると、「これは別の研究会で発表したものですが」と、生年や没年(推定)のほか関係した事件などを回答されたと思う。吉永さんと共に感心したことを覚えている。宮井に関する木村さんの発見は、その後令和3年10月に刊行された平山亜佐子『問題の女:本荘幽蘭伝』(平凡社)でも活用されている。
 3月31日に三回忌を迎えた吉永さんも今回の書評を喜んでおられることでしょう。ありがとうございます。
 1点補足しておこう。サブタイトル中の「学術出版への道」への疑問を呈しておられる点である。私は、この部分を現在の人文書院と誤読していたので違和感はなかった。しかし、戦前における日本心霊学会から人文書院への転身を現すものと読むべきで、疑問を持つのももっともであった。決めたのが編者の栗田さんか編集者か知らないが、「霊術」・「学術」の語呂合わせと「会社概要 - 株式会社 人文書院」にある「戦前は、心理学書を中心に文学書(国内)などを主に出版し、(略)人文科学系の学術的、啓蒙的な書物を刊行していました」との認識に基づくものかもしれない。まあいずれにしてもサブタイトルなので大目に見ましょう。
 

*1:近代出版研究』第3号(皓星社発売、令和6年4月)の木村「昭和七年「雑誌祭」の謎ー読書週間と図書祭の狭間に」の注6によれば、東京大学神社研究会の『千五百秋』第9号(平成29年)に補訂再録し、国会図書館に納本済