神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

噂の南部堂から武井武雄の『がり通』18号(榛の会、昭和19年1月)


 今年は武井武雄生誕130年記念ということで、長野県岡谷市イルフ童画館で「新コレクション展」を6月17日まで開催中である。そこで、今回は4月の平安蚤の市で南部堂から入手した『がり通』18号(榛の会、昭和19年1月)を紹介しよう。南部堂は東京古書会館の萬書百景市に出品して知名度が大幅にアップしたところですね。 
 本書は、18頁の小冊子。しかし、いい値段でその後の四天王寺みやこめっせの古本まつりで使った金額を大幅に上回る値段だった。「国会図書館サーチ」や「美術図書館横断検索」ではヒットしない*1。「日本の古本屋」では柏林堂が『賀利版通信』36号・37号(昭和28年)2冊を3万5千円で出しているほか、呂古書房が出品した『第四回榛の會がり版通信下(六)』(昭和13年)と『第34回榛の會がり通』(昭和27年)が売り切れている。確かに貴重な冊子である。会員は50人だったようなので、予備も含めて50数部の発行だろうか。表紙の写真を挙げておく。

 本誌については、あまり情報がない。別冊太陽のイルフ童画館監修『武井武雄の本:童画とグラフィックの王様』(平凡社平成26年3月)113頁には次のようにあるだけである。

昭和十年(一九三五)、版画年賀状交換会「榛の会」を結成。(略)「ガリ版通信」というリーフレットが武井の手によって制作され、会員の成績表では、「黒星がたまるとクビ」という厳しさもあった。

 市道和豊『【奇跡成立】榛の会昭和21年:芸術集団の戦中・戦後』(室町書房、平成20年4月)を見ると、さすが記載がある。18号のほか、19号(昭和19年12月)、20号(20年9月)、21号(同年12月)、22号(21年1月)、23号(同年11月)、25号(22年11月)、26号(23年1月)に言及されている。市道氏は、『ガリ通』との表記を採用している。18号は表紙が「はんのくァいがりつう」、扉が「賀利版通信」、奥付が「がり通」で、このブログでは奥付の表記に拠った。
 生誕130年ということで、武井についての詳細な伝記が求められる。
追記:志村章子『ガリ版ものがたり』(大修館書店、平成24年3月)の「武井武雄ガリ通』の世界ー榛の会と孔版画家、祐生・八十氏」に詳しい記述があった。
昭和10年から29年の20年間に戦中、敗戦直後等を除き、年2回発行された。全37号
祐生出会いの館鳥取県南部町)には全号所蔵されている
・発行部数は50数部と推察される
参考:「武井武雄刊本作品友の会本会員を目指す我慢会の好古家や宝塚の女優達 - 神保町系オタオタ日記

*1:追記:「独立行政法人国立美術館所蔵作品総合目録検索システム」で、京都国立近代美術館所蔵の『第4回榛の会ガリ版通信上』(昭和12年11月)がヒットする。