神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

漱石全集の補足を書いた日ーー紅野敏郎先生の没後10周年ーー

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岩波書店の伝統的看板たる『漱石全集』の定本版も着々と刊行され、近く完結予定である。かつて、紅野敏郎先生が旧全集の書簡篇に書いた注について、私は「紅野敏郎先生の図書館員知らず - 神保町系オタオタ日記」と書いたことがある。紅野先生に「図書館員知らず」とは、若気(?)の至りだが、私が補足を書くのは最大の敬意の現れなので今後も御理解願いたい。その紅野先生も亡くなられて、今年で10年である
さて、定本の書簡篇の「人名に関する注および索引」は紅野先生が作成したものに、紅野謙介中島国彦・長島裕子各先生が増補改訂したものである。私が指摘した今井貫一や今沢慈海は不詳とされていたものから生没年・経歴が記載された。現在では、図書館関係者については『図書館人物事典』(日外アソシエーツ、平成29年2月)が刊行されているので、同書が役に立ったのかもしれない。なお、私は指摘しなかったが不詳とされていた島文次郎についてもきちんと注が書かれている。
ところで、拙ブログも多少役に立ったかもしれない。不詳とされていた田内長太郎の没年・経歴が記載されている。私が「不詳 田内長太郎 - 神保町系オタオタ日記」で明らかにしたところである。薄井秀一(北澤秀一)についても、記載が詳しくなっている*1
新たに中井浩水が立項されていた。「不詳.明治39年当時は雑誌『趣味』の編集に携わっていた」とある。中井の正体には、私も手こずったが、「谷崎潤一郎のパトロン(その4) - 神保町系オタオタ日記」で示したように本名新三郞、明治15年生である。没年は不明だったが、ググってみたらビックリ。いつもお世話になってます「蔵書印データベース」の「蔵書印DB中井文庫」の人物情報欄に昭和34年没と記載されていた。ありがとうございます。
あとおまけに指摘しておくと、明治45年3月3日付け内田貢(魯庵)宛に「日本図書協会」とあるが、正しくは「日本図書館協会」である。日本文庫協会を改称したものとの注はあるが、正しい名称について言及されていない。
注にはまだまだ不詳とされている人物が多い。解明したら、随時アップしていきたい。