江戸川乱歩は、東京精神分析学研究所の初期のメンバーとして「田内長太郎(ヴァン・ダインの長序を訳した人)」を挙げている*1。この田内、詳しい経歴が不明。乱歩が、『探偵小説『土曜会』通信(2)』(昭和22年3月2日*2)で、「田内長太郎君逝去 往年の“新青年”寄稿家田内長太郎君は三月十八日病気の為逝去されました。/遺族は左記です。/千葉県夷隅郡興津町 田内よし」と書いているので、没年は判明した。生年より先に没年がわかってしまった。
ところで、この田内と同姓同名の人物が漱石全集にも出てくる。漱石の大正5年2月28日付け牛込柳町四十九下川方、田内長太郎宛書簡である。文面は、
私は貴方に会つても何にもあなたに利益を与へる事は出来マイト思ヒマス第一私は思想上あなたと何の位どの点に於て関係してゐるか丸で分らないのですから。私に会フヨリ自分ノスキナ書物ヲ読ンデソシテ其処カラ解決ヲ得ル方が得策デセウ
紅野敏郎氏による人名注は「不詳」。この田内が自分の好きな書物を読んで研鑽を積んだか、『新青年』に田内長太郎なる人物が、ポーの翻訳*3とか、「カリオストロ伯爵」*4の執筆をしたりすることになる。
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『ブルータス』は「猫猫である。」特集(笑)、じゃなくて、「猫である」特集。「猫好き作家の猫文学。」には、谷崎潤一郎も出てくる。