神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

村井弦斎

『料理辞彙』と村井弦斎

江見水蔭の書簡の謎は、くうざん先生の手により、あっという間に解決されてしまったが、この謎は中々解けないと思われる。7月29日に書いたネタだが、重要な記述を見落としていたので、追加情報と併せて再掲しよう。 坪内逍遥の日記によると、 大正7年7月3日 …

『蘆花日記』で笑ふ

徳冨蘆花の日記は、基本的にはロリコン親父の妄想日記とも言うべきものであるが、作家や出版人、宗教家などが登場する真面目な部分は資料として使える。石塚純一『金尾文淵堂をめぐる人びと』や、黒岩比佐子『『食道楽』の人 村井弦斎』は日記を活用した例で…

村井弦斎 対 江見水蔭

斎藤忠編著『書簡等からみた史学・考古学の先覚』(雄山閣、平成10年1月)に、江見水蔭の春陽堂編集局宛書簡が掲載されているが、それが大変謎に満ちている。 拝啓 校正で見ますると、私のが後で弦斎君の 先の様で、最初公表の予告とは違ふ 様ですが、ソレは…

村井弦斎と菊池武徳の「新世紀」

小林一郎『田山花袋研究−博文館時代(三)』によると、明治42年5月2日の読売新聞の「日曜説叢」に、 菊池武徳氏の「新世紀」は、初め「正報」とか「現代」とかする筈であつたが、後で今の名にした。処が「新世紀」の主幹菊池武徳氏は「新世紀」に掲げる小説な…

『『食道楽』の人 村井弦斎』余話(その11)

その他では村井弦斎の、その時分、といって僕のいくつの時かはっきり覚えていないが、その時分の報知新聞の付録としてついていたと思う「飛のり[ママ]太郎」「小猫」とかを、母と一緒に寝ながら聞いたことを覚えている。もう筋はすっかり忘れたが、障子にう…

『『食道楽』の人 村井弦斎』余話(その10)

志賀直哉が、歌舞伎座で「桜の御所」を鑑賞していたのとほぼ同じ頃、当時25歳の読売新聞の記者も鑑賞していた。彼は「歌舞伎座評 下」(読売新聞明治37年4月8日)で 櫻の御所は村井弦斎氏前半生の歴史小説中最も婦女子に愛読されたものださうだが、筋ばかり…

『『食道楽』の人 村井弦斎』余話(その9)

6 坪内逍遥と村井弦斎 日記は、元々公開を予想していないため、第三者が読んでも意味不明の記述が多い。これが、欠点でもあるのだが、また、一種の魅力にもなっている。 坪内逍遥の日記にも、色々謎が潜んでいる。 『未刊・逍遥資料集一』から引用すると、 …

『『食道楽』の人 村井弦斎』余話(その8)

5 弦斎ファンだった文豪 日露戦争開戦後の、明治37年4月、弦斎の愛読者であった当時21歳の青年が、歌舞伎座で弦斎原作の「桜の御所」を鑑賞していた。彼の日記(全集第11巻)を引用しよう。 明治37年4月9日 (略)新橋に着く(略)歌舞伎に行く 一番目は…

『『食道楽』の人 村井弦斎』余話(その7)

4 水島幸子、「女だてらに」新聞記者(承前) 女性記者水島幸子については、平凡社創設者の下中彌三郎とも関係があって、『平凡社六十年史』(昭和49年6月)にも名前が出てくる。 [下中彌三郎は]昭和三十八年になると、かねてから希望であった「婦女新聞…

『『食道楽』の人 村井弦斎』余話(その6)

4 水島幸子、「女だてらに」新聞記者 「スタール博士」といい、最近ググると「古書の森日記」がひっかかることが多いが、水島幸子もその例外ではない。 「婦人世界」明治43年12月号で「白百合」に例えられた婦人記者水島幸子。 黒岩さんは、既にお気づ…

『『食道楽』の人 村井弦斎』余話(その5)

3 大賀一郎と櫻澤如一をつなぐ蓮(承前) 蓮と言えば、ハス博士の大賀一郎を思い浮かべる人も多いだろう。 また、黒岩さんの『村井弦斎』では、「日本の近代食養思想の先駆者ともいえる存在」である「石塚左玄からは多くの弟子が育ったが、その中で最も有名…

『『食道楽』の人 村井弦斎』余話(その4)

3 大賀一郎と櫻澤如一をつなぐ蓮 国書刊行会の『少雨荘書物随筆』収録の「湘雨窓漫録」には、 以上が咄嗟に拾ひ出した明治の重版書であるが、落ついて調べたならまだいくらも出て来るかも知れない。村上弦斎の『小猫』や『日の出じま[ママ]』や『食道楽』と…

『『食道楽』の人 村井弦斎』余話(その3)

2 時ならぬ料理ブーム 坪内祐三、ならぬ坪内雄蔵が、催眠術書にハマっていた明治36年は、村井弦斎が報知新聞に食道楽を連載した記念すべき年でもあった。 「食道楽」の連載や単行本の発行による、「食道楽ブーム」については、黒岩さんの著書を読んでいた…

『『食道楽』の人 村井弦斎』余話(その2)

医者もどきだったら、載ってはいないだろうと思いながらも、『静岡県の医史と医家伝』(土屋重朗)を見ると、何と医者であった(同書393頁、496−497頁)。 山崎増造は安政六年(1859)周知郡犬居村の生まれ、明治七年同地区の小学校の訓導補、…

『『食道楽』の人 村井弦斎』余話

図書館ネタばかり続けると、天の声が「こりゃ!」と言っている気がするので、「文學界」で「歴史のかげに“食”あり」 (第1回は「ペリーの口には合わなかった日本料理」)という連載のスタートをした黒岩比佐子さんへのオマージュ(盗作という意味じゃないよ…

伝書鳩と均一小僧は古本道楽が過ぎてコショテン依存症に!?

日没後は、ふらふらしないことにしているのだが、昨日はお忍びでアンダーグラウンドブック・カフェのトークショー(黒岩比佐子さんと岡崎武志さん)へ。 最初は緊張されていた黒岩さんを巧みにリードされた岡崎氏はさすがと言うべきか。内容は、一言で言えば…

大川周明とトンデモ本の世界(その6)

3 大川周明と櫻澤如一 藤澤親雄は、数冊のトンデモ本を出しているが、酒田市立光丘文庫には収蔵されていない。これに対して、藤澤を「畏友」と呼んだ櫻澤如一の本(トンデモ本とは言えないが)は、次の三冊が収蔵されている。 『新しい榮養學』(昭和17年…