神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

村井弦斎 対 江見水蔭

斎藤忠編著『書簡等からみた史学・考古学の先覚』(雄山閣、平成10年1月)に、江見水蔭春陽堂編集局宛書簡が掲載されているが、それが大変謎に満ちている。


拝啓
校正で見ますると、私のが後で弦斎君の
先の様で、最初公表の予告とは違ふ
様ですが、ソレはまア仕方がないとして
丁付けから考へると、私の受持ペーヂは
半分にも達していない様ですが、
 最初のお約束はペーヂを余分に頂く事で
 それを無惨にも一蹴された事に成りは
 しませんか。
それも亦已むを得ないとして、然うなると
先日御渡し致しました原稿の
後半は ノックアウトされるわけですが、
 その後半の中にも出して頂きたい
 ものがあり、前半のを抜いて貰ひ
 たいのもあり、
要するに斯ういふ事は前以て作家と
編集者と協議するのが本統ではないで
せうか。
 イヤ、それも私の原稿が全部編入されるなら それは問題では
 ありませんが(最後の『尻尾の有る女』は抜かれてもよろしいが)。
                        十一月十二日夕
春陽堂
 編集局御中
                        江見水蔭


斎藤忠は、この書簡について、斎藤忠監修『江見水蔭『地底探検記』の世界』(雄山閣、平成13年8月)中の「考古学史上の江見水蔭」で「春陽堂は、明治29年7月から『新小説』を刊行している。おそらく、この雑誌の原稿のことと思われる。」と推測しているが、書簡の文脈から言って、作品集と思われるので、春陽堂から昭和5年12月に刊行された『明治大正文学全集 第15巻 村井弦斎篇・江見水蔭篇』のような気がする。そうすると、村井没後の話である。


追記:「くうざん、本を見る」で、謎が解明されている。