神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

『『食道楽』の人 村井弦斎』余話(その11)

その他では村井弦斎の、その時分、といって僕のいくつの時かはっきり覚えていないが、その時分の報知新聞の付録としてついていたと思う「飛のり[ママ]太郎」「小猫」とかを、母と一緒に寝ながら聞いたことを覚えている。もう筋はすっかり忘れたが、障子にうつる竹の影を見て画をかく話だけは覚えている。(略)僕は母と一緒に寝ていた時分で、その小説を聞いて興奮したことを今でもたいへんなつかしく感じている。他のことはすっかり忘れても、それを聞いたときのいい気持は、子供時分の思い出と一緒になってへんになつかしく思い出す。


この思い出を語る作家は、明治18年5月生まれ。
黒岩さんの著書によると、『飛乗太郎』の原題「鉄欄干」は、明治23年に「郵便報知新聞」に連載。「小猫」は明治24年から25年にかけて同新聞に連載。


この作家は、白樺派の巨匠、武者小路実篤である。
(「若き日の読書」(『自分の歩いた道』読売新聞社、昭和31年11月。『武者小路実篤全集第15巻所収』)