金沢文圃閣の『日本陸軍『各部隊文庫図書目録』ーー帝国軍隊の読書装置』がtwitterで話題になった。1910年頃における宇都宮、熊谷、佐野連隊などの陸軍における『各部隊文庫図書目録』の復刻である。こういう特殊な環境下の読書状況は、まだまだ研究が進んでいないようだ。軍隊内ではないが、獄中読書については拙ブログで紹介したことがある。
・「巣鴨プリズナーも最後は神頼み? - 神保町系オタオタ日記」
・「西式強健術で健康維持に努めた獄中の蔵原惟人 - 神保町系オタオタ日記」
・「350冊もあった小菅刑務所内の橘孝三郎文庫 - 神保町系オタオタ日記」
さて、和田敦彦『読書の歴史を問うーー書物と読者の近代ーー』(笠間書院、平成26年7月)にも獄中読書に関する記述がある。
また、林房雄の『獄中記』や村山知義の書簡集をもとに、監獄の読書についてとりあげた中山弘明の研究もある。村山知義の場合、一九三二(昭和七)年から一年半豊玉刑務所で過ごすが、その間に四五〇冊の書籍を読んだという。それら書籍のタイトルを書簡から掘り起こしながら、出獄後の創作へと結びついていく点を具体的にたどることが試みられている。
中山著の「第一〇章監獄の『夜明け前』ーー読書行為と作劇法」を見てみた。「村山知義獄中読書リスト」が作成されている。リストで発行時期が不詳とされているものを調べてみると、
・昭和7年6月14日書簡中の「世界プロレタリア演劇グラフ(『中央公論』掲載、未詳)」→ざっさくプラスに該当なし。国会図書館サーチで昭和7年中の『中央公論』の目次を見ても、該当なし。グーグルブックスによれば、『プロット』昭和7年5月号(日本プロレタリア演劇同盟)に「中央公論の『世界プロレタリア演劇グラフ』は中々力強くて」とあるので、存在するのは間違いない。
・昭和8年4月7日書簡中の『光は闇より』(岩崎武雄、未詳)→岩橋武夫『光は闇より』(日曜世界社、昭和6年1月)
・同年9月11日書簡中の『無くもがなの記』(山岡竜次、未詳)→山岡竜次『無くもかなの記』(沢登哲一、昭和8年)
1番目の『中央公論』は私にもわからなかった。目次には別のタイトルで挙がっているのかもしれない。
- 作者:中山 弘明
- 出版社/メーカー: 双文社出版
- 発売日: 2012/11
- メディア: 単行本