神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

たにまち月いち古書即売会で拾った新密教社の雑誌『家庭と佛教』(大正10年)と福来友吉

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 3ヶ月振りに大阪古書会館のたにまち月いち古書即売会の初日へ。6月と7月は初日に行けずに2日目に行っていたが、やはり初日でないと特に古本横丁の和本300円コーナーはガタガタであった。初日の今回は、古本横丁で幾つか拾えたほか、杉本梁江堂の300円均一コーナーに変わった本が出ていて面白かった。古本横丁で和本に紛れていた仏教婦人雑誌を紹介しておこう。
 『家庭と佛教』4巻6号(新密教社事務局、大正10年6月)である。編輯人は日下義禅、発行兼印刷人は川人宥賢。発行所の新密教社事務局は、大阪市南区三津寺三津寺内に所在。国会図書館サーチではヒットしない。別途調べた高野山大学図書館でも4巻10号しか所蔵していない。しかし、どこかの図書館にはあるようで、『「日本の婦人雑誌」解説編』(大空社、平成6年1月)の「近代婦人雑誌関係年表」(三鬼浩子)によると、大正7年4月から14年12月まで発行、後に『家庭の教』となり、編集は日下、後に大野石松となっている。『家庭の教』で検索すると、高野山大学図書館が9年6号,大正15年6月から13年4号,昭和5年まで所蔵している。この年表には、いつも感心する。「未だ詳細不明の『伊那婦人』創刊号(伊那婦人社、大正11年) - 神保町系オタオタ日記」で言及した『伊那婦人』こそ記載はないが、私が調べる婦人雑誌はたいてい載っている。通読したら、何か発見できるかもしれない。
 編輯人の日下の経歴は、『豊岡市史』下巻(豊岡市、昭和62年3月)に載っていた。要約すると、

明治15年1月 山本村中田茂右衛門の次男に生まれる。本名常吉
同26年 京都府熊野郡海部村海士(現久美浜町*1海士)宝珠寺に入り、日下義定を師として、得度
同43年 真言宗高野山大学卒業
大正5年 大阪市了徳院住職
昭和18年 真言宗東寺派管長
昭和31年2月 没

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 目次を挙げておく。「雑報」として、「福来博士講演」が載っていた。「去る廿二日兵庫県良元村教育会主催にて小林小学校に於て二時間余に亘る大雄弁を振はれ五百余の聴衆に多大の感動を与えられたり」という。福来友吉の「生命主義の宗教」が載った『密教講演集』第1輯(密教青年会・新密教社、大正9年1月)については、「唯書房出品の『密教講演集』第一輯(密教青年会・新密教社、大正9年1月) - 神保町系オタオタ日記」で言及したところである。同書の奥付も挙げておく。
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 密教青年会は了徳院の日下が主宰、新密教社は三津寺の川人主宰ということになるようだ。また、おそらく『家庭と佛教』や『家庭の教』には、福来の寄稿や動向を記載した記事が載っていると思われる。今後、福来を研究しようとする者は両誌を調べる必要があるだろう。
参考:「福来友吉と真言宗の関係について研究を期待するーー知恩寺の古本まつりで見つけた『六大新報』ーー - 神保町系オタオタ日記

*1:現在の京丹後市