神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

唯書房出品の『密教講演集』第一輯(密教青年会・新密教社、大正9年1月)

大阪古書会館で唯書房出品の上記を800円で。目次は、

密教とデモクラシー 密教青年会講師 佐藤独嘯
弘法大師と将来の仏教 同 和田性海
生命主義の宗教 文学博士 福来友吉
真言密教の宇宙観 前豊山大学長・大僧正 権田雷斧

密教に関心はないが、福来の講演が載っていたので、購入。編輯人は日下義禅、発行人は川人宥賢。密教青年会は、大阪市外浦江了徳院に所在。どういう団体だろう。新密教社は、大阪市南区三津寺町三津寺に所在。本書も所蔵する図書館は皆無か。
福来は、講演の冒頭で、

私が今度高野山で修行した事及び今春三月末から四月初旬に懸けての四国順拝に就て世間の人々の中には彼は奇妙な事と(ママ)する男である学問を棄てゝ信仰に入る者である等と云ひますが是は間違ひでありまして私は学問丈けでは満足出来ないからして信仰に入つたのであつて学問を棄てたのではありません。

と言っている。福来が東大を追われたことについては、「福来友吉の東京帝国大学文科大学助教授追放に関する二つの説」参照。
面白かったのは、「知識的に出来ない事が無我の境に於て出来得る」例として、福来が秋の末に物置小屋の屋根に登って落葉の掃除をした後、板で蓋をしてある井戸に飛び降りた時のことについて述べている所。板が腐っていて真ん中から折れた。しかし、福来は、無意識のうちに石造りの井戸の縁を両手で押さえ、体は中に「フハリフハリ」と振動した。その後、何の恐怖もなく、平気で体をかわして外に出たという。これを読んで、映画『リング』の貞子を思い出して、可笑しかった。