みやこめっせの文学フリマ京都をのぞいてきた。いつも思うが、若い人が多いので、私みたいな爺さんが行くとやや場違いの感がある(´・_・`)冷やかしだけで買う積もりは無かったのだが、見本誌コーナーで、すとせかい『天狗倶楽部☆フォーエバー:明治奇人奇行カタログ』(ストワールドイノベーション出版局、令和元年12月)を見つけ、面白そうなので慌てて購入、500円。天狗倶楽部のメンバー及び彼等の奇行を主にヨコジュンさんの著作を元に面白く紹介したものである。特徴的なのは、ヨコジュンさんが天狗倶楽部のバンカラ振りを痛快としている見方に対し、女性目線(?)から「それ、どう考えても迷惑行為だろう」と突っ込みを入れているところである。ヨコジュンファンの私は、ヨコジュン本に「うん、うん」と頷くだけであったが、本書で「なるほど、そういう視点があったか」と目からうろこであった。特に新知見を加える研究書のようなものではないが、押川春浪に関する近年の論文も踏まえ、おちゃらけた雰囲気の中にも、天狗倶楽部への愛情や深い理解を感じさせるものであった。
さて、私は天狗倶楽部の一員である彌次将軍こと吉岡信敬については、
・「早稲田大学応援団長吉岡信敬にとうとう出会う - 神保町系オタオタ日記」
・「三上於菟吉と早稲田大学応援団長吉岡信敬 - 神保町系オタオタ日記」
・「亡くなる直前の吉岡信敬彌次将軍 - 神保町系オタオタ日記」
・「吉岡信敬彌次将軍の独男宣言 - 神保町系オタオタ日記」
などで、紹介したことがある。今回、大正8年高橋箒庵が出会った「吉岡信敬」についてアップしよう。『萬象録:高橋箒庵日記』巻7(思文閣出版、平成2年7月)から。
(大正八年)
三月十四日 金曜日 晴/寒暖計四十八度
(略)
吉岡信敬なる者、静岡臨済寺の書画什器を東京にて売却せんとする其周旋方を依頼せられたりとて来訪、同品は湯島の麟祥院に預け置きたれば一度検分を乞ひたしと云ふ。田舎寺寺の道具など到底優等品あるべしとも思はれず、実見の上所見を直言せば住持は必ず失望すべしと言ひたれども、是非に一覧をとの事に就き明日午前麟祥院を訪ふべしと答へ置けり。
翌3月15日高橋は麟祥院に出かけたが、予想通り取るに足らない物ばかりで、全体で3千円から5千円位と言うと、吉岡ほか2、3名の立会人は皆落胆したという。『明治バンカラ快人伝』(ちくま文庫、平成8年2月)によれば、吉岡はこの頃読売新聞の記者であった。高橋の日記の記述だけでは、彌次将軍の吉岡と同定する決め手に欠けるが、直感的には同一人物のような気がする。ただ、早慶戦中止事件の中心人物が、慶應出身の高橋の所へ行ったとすると何とも言えないものがある。