神保町系オタオタ日記

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天神さんの古本まつりで岡本橘仙と金子静枝に出会うーー山崎青雨編『うた沢全集』(岡野楽器店、大正8年)からーー

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 今年も天神さんの古本まつりの100円均一台でホクホクした人が多かっただろう。文庫本の棚は小さかったが、変わった本が多かった。今回は、山崎青雨編『うた沢全集』(岡野楽器店、大正8年10月)を紹介しよう。
 「うた沢」にあまり関心はないが、「エコール・ド・プラトーンの時代に哥澤芝虎編『哥澤撰』(クラブ化粧品本舗) - 神保町系オタオタ日記」で言及したことがあるのと、楽器店の発行本が珍しそうと購入。作詞者名を見てみたら、岡本橘仙が2曲、金子静枝が1曲載っていて驚いた。岡本は「集古会会員としての旅館萬屋主人岡本橘仙と夏目漱石 - 神保町系オタオタ日記」や「岡本橘仙や金子竹次郎らの読書会記録『列子天瑞篇之研究』ーー黒田天外の旧蔵書かも?ーー - 神保町系オタオタ日記」などで言及したことがある。京都の文芸芸妓磯田多佳と親しかった旅館萬屋の主人である。金子は「日出新聞記者金子静枝と意匠倶楽部ーー京都市学校歴史博物館における竹居明男先生の講演への補足ーー - 神保町系オタオタ日記」で言及した日出新聞記者である。
 岡本は、『集古会誌』に蒐集分野が「俗曲に関するもの」とあったが、蒐集だけでなく自ら作詞もしていたことになる。金子が作詞をしていたとは新知見かもしれない。この2人はおそらく親しかったと思われる。杉田博明『祇園の女:文芸芸妓磯田多佳』(新潮社、平成3年1月)116頁によれば、岡本は明治21年3月『美術叢誌』を創刊。執筆者には宇田川文海、坪内逍遥らと共に金子錦二(静枝の本名)がいた。岡本の甥が「京都の文人宿万屋主人金子竹次郎が残した日記 - 神保町系オタオタ日記」や「『京都人物山脈』(毎日新聞社)に万屋主人金子竹次郎 - 神保町系オタオタ日記」などで言及した谷崎潤一郎と親しかった金子竹次郎である。2人の金子はおそらく面識があったと思われるが、今のところ確認できていない。
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