神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

甲南大学教授ロルフ・ビンケンスタイン旧蔵の古書目録『ちか』(幽学荘舎)

f:id:jyunku:20200215162558j:plain
何年か前に、かわじもとたか氏から古書目録『ちか』4号(幽学荘舎、昭和14年5月)をいただいた。ありがとうございます。この目録は、『日本古書通信』平成12年9月号の二見和彦「『ちか』という古書目録」によれば、巌松堂の波多野重太郎が還暦を期に引退し、大船で開業した幽学荘舎から通信販売用に発行した目録。昭和13年9月創刊、17年8月の27号まで発行された。
f:id:jyunku:20200215162650j:plainf:id:jyunku:20200215162731j:plain
付箋はかわじさんが貼ったもので、原稿、マッチペーパー蒐集帳、太政官御用鞄、書簡に注目されたようだ。この目録『ちか』は研究者も注目しているようで、グーグルブックスで検索すると目録から引用している文献が幾つかヒットする。反町茂雄の『弘文荘待賈古書目』はCD・DVD版、Web版が出て活用されているが、この『ちか』も目録上でしか存在しない史料があるのだろう。
f:id:jyunku:20200215162750j:plain
ところで、目録に挟まっていた『幽学荘舎舎友カード』に「ビンケンスタイン」と書かれている。なんか見覚えがあると思ったら、『昭和前期蒐書家リスト』に載っていた。住所は「京都帝国大学文学部」で、蒐集分野は「日本関係」である。出典は『日本蒐書家名簿』(日本古書通信社昭和13年)。幽学荘舎への舎友カードは送らなかったようだが、日本古書通信社への「芳名カード」は送っていたのだろう。このビンケンスタイン、グーグルブックスでヒットする『甲南大学紀要:文学編』19号に略伝が載っているロルフ・ビンケンスタインだろう。一部しか見られないが、それによると、

明治43年10月 ライプチッヒ生
昭和5年4月 ライプチッヒ大学入学
昭和8年9月 京都帝国大学留学(14年まで)
昭和51年3月 甲南大学教授定年退職

この経歴には若干疑問があって、『京都帝国大学一覧』の昭和11年版までは文学部文学科の外国学生として8年入学の「ロルフ・ビンケンシュタイン」(独逸)が確認できるが、12年・13年版以降には見当たらない。いずれにしても、後の甲南大学教授ビンケンスタインがこの『ちか』を所蔵していたと思われる。どういう人物だったのだろうか。