神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

天神さんの古本まつりで新田錦城編『都市と藝術作品集』(マリア画房、昭和14年)ー石崎光瑤《浅春》掲載ー


 天神さんの古本まつりをのぞいてきた。今回100円均一コーナーが珍しく?くろっぽい本が少なくて、さっぱりだった。しかし、古書ダンデライオン、南部堂、初参加の古書フジエダからいい本が買えた。更に厚生書店が段ボール箱数箱に詰まった初出しのような紙ものを出していて、良さげであった。ただ、出遅れて収穫は明治38年の日記1点だけであった。
 それとは別に厚生書店の単行本300円均一の中に、新田錦城編『都市と藝術作品集』(マリア画房、昭和14年5月)があった。「都市と藝術」からモダニズムを期待したが、その要素はなく迷った。しかし、京都文化博物館で観た「生誕140年記念石崎光瑤展」(~11月10日)によりマイブーム中の光瑤の作品が載っているのと、マリア画房(京都市上京区)の発行なので購入。マリア画房は、拙ブログ「元美術記者神崎憲一が発行した『アートグラフ』創刊号(マリア画房、昭和26年)ーーマリア画房の高野敏郎と新京の大陸美術社もーー - 神保町系オタオタ日記」で紹介した美術出版社である。
 本書は、国会図書館サーチ、CiNii Books、美術図書館横断検索や日本の古本屋の出品記録ではヒットしない。そのため、マリア画房の出版史を語る際には貴重な発見と思われる。もっとも、よくよく調べると京都学・歴彩館が所蔵していた。扉には「春の巻第一輯」とあるが、続篇が出たかどうか。編者の新田は、『京都画壇大観』(昭和8年1月)や雑誌『都市と藝術』(大正6年7月創刊)を発行した都市と藝術社(京都市上京区)の主宰者である。新田がマリア画房に企画を持ち込んだのかもしれない。

 光瑤の作品《浅春》の写真を挙げておく。見覚えのある気がしたものの、前記展覧会の図録には載っていなかった。図録で「静謐なる境地へ」とされた昭和10年代の作品と思われる。現存するだろうか。