神保町系オタオタ日記

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知恩寺秋の古本まつりで御成婚記念千葉県図書館長の廿日出逸暁に出会うーー梅原真隆の『道』と廿日出逸暁ーー

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 知恩寺秋の古本まつりで其中堂から入手した梅原真隆の個人雑誌『道』(親鸞聖人研究発行所、のち道発行所)を見ていたら、廿日出逸暁(はつかで・いつあき)の名前が出てきて驚いた。一つは、125号,昭和10年10月の「道味」欄で、金剛山に来た廿日出からの「去三日以来の私生活ですが元気で御座います」という内容の書簡が掲載されている。もう一つは、127号,昭和10年12月の「知友消息」欄で、「○廿日出逸暁氏 千葉図書館に就任」とある。
 戦前の知識人には寺の出身者が多いので、廿日出もそうだったのかと思ってしまった。しかし、廿日出『図書館活動の拡張とその背景ーー私の図書館生活50年ーー』(図書館生活50年記念刊行会、昭和56年2月)の「まえがき」に、「私は風光に恵まれた景勝地、瀬戸内海の南を受けた島のみかん畑に囲まれた、百姓の五男三女の末子として生れました」とある。寺の出身ではなかったようだ。
 廿日出は、略年譜では、明治34年広島県豊田郡豊町生まれで。大正14年龍谷大学文学部社会学卒業。おそらく、龍谷大学教授だった梅原とその時知り合ったのだろう。廿日出は、その後帝国図書館嘱託、御成婚記念千葉県図書館長などを務めることになる。
 実は、知恩寺の古本まつりでは、竹岡書店の3冊500円コーナーから廿日出旧蔵書も見つけている。冒頭に写真を挙げた『宗教現象の心理学的研究』である。表紙には「岩井教授/心理学概論/廿日出逸暁」と書かれた付箋が貼られている。
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 内容は、「縁起ノ一考察」で、末尾に「廿日出逸暁/謹書完」とあって、岩井教授の論文を筆写したものかもしれない。心理学の岩井というと、「京都帝国大学文学部心理学教室第三代教授岩井勝二郎の日記ーー書砦・梁山泊から貰った日記にビックリーー - 神保町系オタオタ日記」で言及した京都帝国大学文学部心理学教室の岩井勝二郎助教授が連想される。ただし、闘病中の岩井が教授になったのは、昭和12年の死の前日なので「岩井教授」が岩井勝二郎の可能性は低いと思われる。そうなると、「岩井教授」は誰だということになるが、さっぱり分からない。
追記:『龍谷大学三百五十年史 通史編上巻』(龍谷大学、平成12年3月)634頁に大正11年龍谷大学文学部開講時の講座が出ていて、心理学概論の講師として岩井勝二郎の名前がある。
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