木山捷平「何でもない詩論」『詩人時代』昭和6年5月号(創刊号)によると、
福島県の平という町はどの位の大きさの町なのであらうか。又どんな町なのであらうか。
地理の学者にも、天文の学者にも、法律の学者にも、社会科学の学者にも、知られてはゐないであらう。私も知らない。
けれども、この名もない町が私にはどういふものか、日本の詩人の産卵口のやうな気がしてならない。
草野心平も、猪狩満直も、三野混沌も、みんなそこから生れた。
最近、そこの町から送られて来た「海岸線」といううすつぺらな詩誌を見てゐると、石川武夫といふ未知の人が、又いゝ詩をかいてゐる。
名前の出てくる詩人のうち石川武夫だけが『日本近代文学大事典』に立項されていないが、『一九二七年詩集』(抒情詩社、昭和2年7月)の「一九二七年詩人録」によると、
また、草野心平の年譜昭和6年2月の項に、「平町での同人誌「海岸線」2月号(編輯発行島田春夫)に熊十蔵の筆名を使う」とある。
(参考)『日本近代文学大事典』によると、『詩人時代』は吉野信夫主宰で、佐野嶽夫、服部嘉香、河井酔茗、萩原朔太郎、福田正夫、井上康文、高橋新吉、壺井繁治、小野十三郎、岡本潤、遠地輝武、北園克衛、村野四郎、佐藤惣之助、高村光太郎、八木重吉、草野心平、中原中也らが執筆した。
前橋文学館で11月5日〜12月18日「草野心平展」があるようだ。