神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

消えた大西小生

薄井秀一=北澤秀一はちと一休み。昔々大西小生という人がいた。いや、今もいるはずだが、主宰していたホームページ「新「アリス」訳解」は2009年以来消滅したままである。小谷野敦『リアリズムの擁護 近現代文学論集』(新曜社、2008年3月)所収の「岡田美知代と花袋「蒲団」について」に、

田中秀夫」のモデルの永代静雄についても、『不思議の国のアリス』の翻訳もしていることなど、あまり知られていないが、これについては在野の研究家大西小生が、私家版『「アリス物語」「黒姫物語」とその周辺』(ネガ!スタジオ、二〇〇七年)を出している。(略)永代静雄を中心として事実関係をよく調べたものだが、永代と美知代に肩入れして、「蒲団」に描かれたような二人の実事を否定しており、承伏しがたい。

と言及された人物である。黒岩比佐子さんの「古書の森日記」にも何度かコメントした人で、たとえば2008年5月22日分には、

1. Posted by 大西小生 2008年05月22日 16:01
永代静雄研究者の大西です。
『不如帰』の柳の下のドジョウを狙った作品については 大屋幸世先生の『書物周游』(朝日書林、1991.)所収「「不如帰」余波」に詳しく書かれてますね。
横田順彌先生が、この本で永代静雄の『終篇(しゅうへん)不如帰』を知り、その後、古書通信などで取り上げて(『古書ワンダーランド 1』所収)、蒐集家の間で永代のことが有名になったわけです。
まぁ内容のわりに永代の本の古書価が釣り上がるといった弊害もあったんですが。
http://www.eonet.ne.jp/~shousei/alice/diary07_6.html
私としては、勝手ながら横田先生の研究を引き継いでるつもりです。

2. Posted by 大西小生 2008年05月22日 16:03
5年前に横田順弥先生からいただいたハガキによれば、横田先生が大屋幸世先生に『終篇 不如帰』の話をしたところ、その本は手離したあとだが探してあげよう、と言って大屋先生が神保町の古書展を駆け回って見つけてくれたとのことでした。ちょっとした表現を悪意に受け取ってネチネチ批判する専門研究家や先行研究家は多いが、そういう方もおられます、と横田先生の非常に感謝していたことが印象に残ってます。

3. Posted by Hisako 2008年05月22日 19:57
大西さま、コメントありがとうございました。永代静雄が『終篇不如帰』を書いていたというのは、記憶にありませんでした。しかも、垂直離陸機(ヘリコプター)が登場するとは……。大正に入ってからもそうしたタイトルで本が出ていたということは、本家本元の『不如帰』の人気が、それだけ長く続いていたということでしょうね。

横田順彌さんがお書きになったことで、古書価が上がった本というのはいろいろあるようですね。ご本人がそう言っていらっしゃるのを、私も聞いたことがあります。それでも、古い本を全部コピーして読むのは大変ですし、高くてもしかたがない、と清水の舞台から飛び降りることも……。

この後もコメントのやりとりは続くが省略。これによると、ヨコジュンさんにも接触していたようだ。今頃、どうしているのかしらね、別の名前で活躍してるのかしら。大西氏の前掲書は読んだが、未読の『解題「女皇クレオパトラ」「大ナポレオンの妻」』は日本近代文学館に行ったときに読もうか。