神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

「谷崎潤一郎訳『源氏物語』を発禁にしろ」と、小川平吉

小川平吉の日記を見てたら、谷崎訳の『源氏物語』を発禁にしろという運動があったようだ。

昭和14年2月1日 日本社午餐会、源氏物語俗訳禁止に努力する事を議決す。

  2月6日 夜浜町蔦毛登に首相秘書太田耕造氏の招宴に臨む。池田、入江、岩田、葛生、横矢等志士の外、斎藤、宮沢*1両女婿同席す。源氏物語禁頒の議あり。

  2月15日 夜日本新聞社々友招待、陶々亭。食後源氏物語発禁論賑かなり。三井氏、蓑田氏、下位氏等最熱心なり。 

  2月17日 七時半平沼首相を訪ふて(略)源氏物語翻訳発禁の事を語る。首相頗る熱心に傾聴す。(略)予曰く、彼等の損失は気の毒なるも損失位は賠償の途を講じても可なるに非ずや、国家の大損失には換へ難しと。首相亦賛す。

  2月18日 九時近公を荻窪に訪ひ香港来信を示し種々協議す。(略)
       源氏物語発禁の件を談ず。公も同感にて木戸侯に注意すべしとのことなり。依て帰宅後約に従ひ日本新聞三通を送付す。

明記されてはいないが、前月の23日から刊行開始された谷崎訳の『源氏物語』のことだろう。近衛文麿も関与したようだが、結局発禁にはなっていない。

*1:小川平吉の次女ことの夫宮沢裕。宮沢喜一の父。