神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

自笑軒と号した田端の杉本僖平

木村捨三編『千里相識』(集古会、昭和10年9月)は集古会の会員名簿だが、それを見てたら、

杉本僖平 明治十七年四月十四日生
一出生地:日本橋区伊勢町壹番地
二現在住所:東京市瀧野川区田端町三百四十三番地
三職業:懐石料理
四研究の事項:料理ト茶道
五蒐集:茶道ニ関スル器物
六本姓・雅号:自笑軒、苔石、不言庵、笑阿彌

とあった。田端町三百四十三番地は天然自笑軒の所在地だ。自笑軒と号した杉本という集古会々員が自笑軒の関係者だったとは初耳である。しかし、小林素次「「天然自笑軒」−宮崎直次郎−」(『大衆に愛された作家・趣味人たち』東京都北区立中央図書館)によると、天然自笑軒は、宮崎直次郎が開業し、大正14年直次郎の没後、長男平太郎が継ぎ、更に息子平一が継いだはずで、杉本は謎の人物である。黒岩比佐子さんが生きておられたらこの謎解きに参加してくれただろう。

(参考)「田端の天然自笑軒に集う文人」(2010年8月2日
   「岡野知十と『家庭実習講義録』」(2010年9月5日)   
   「田端の天然自笑軒と俳人岡野知十の深い関係」(2010年9月10日
   「『秘密辞典』の著者自笑軒主人の正体はあの学者だった!?」(2010年9月13日

当時の黒岩さんの感想を幾つか。黒岩さんの好きな明治・大正期の話で少しの間でも病苦を忘れさせることができていたのなら、記事にして本当に良かった。

Posted by Hisako 2010年08月29日 09:35(「古書の森日記」2010年8月22日)
オタさんの情報探索のすごさには脱帽です。「自笑軒主人」による『秘密辞典』の謎もいつか解いてください。宮崎直次郎とその周辺の文化人が面白がって編んだものだとしたら、実に面白いですが。私はその可能性が高い気がします。

Hisako 2010/09/08 16:28(「神保町系オタオタ日記」2010年9月5日)
岡野知十とは! 予想もしない人名が出てきて、ワクワクしています。

Hisako 2010/09/14 16:56(「神保町系オタオタ日記」2010年9月13日)
すごい発見で、ただもう驚きました。短期間でここまで突き止めるとは、やはりオタさんはタダモノではありません……。まだまだ芋づる式にすごい事実が出てきそうなので、期待しています。

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『ミステリマガジン』連載の紀田順一郎「幻島はるかなり〈翻訳ミステリ回顧録〉」は、最終回で山下武が出てきた。紀田氏とありし日の山下の写真は、北方人日記さんの「作家山下武先生逝く」にあり。