神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

 堀一郎と偽史運動(その1)


そろそろスメラ学塾ネタや偽史運動ネタをせい、という声が聞こえる(笑)ような気がするので、久しぶりに話題に。


柳田國男偽史運動の関係については、大塚英志先生が盛んに紹介しているのだが、偽史運動との関わりで言えば、むしろ柳田の三女三千の婿、堀一郎の方が深く関与していたと思われる。堀一郎は、宗教民俗学の樹立者らしいが、戦前、国民精神文化研究所の助手として、所員の小島威彦や研究嘱託の藤澤親雄とは同僚であった。


藤澤の「大東亜一神論」(『興亜』昭和18年2月号)は、相変わらず濱名寛祐発見の「契丹古伝」やら「ミユー大陸」(ムー大陸のこと)が登場するのだが、そこに堀一郎の名前も出てくる。

日本太古秘史の或るものは太古に於ける「すめらみこと」が原則として御一代に一度は海外の諸皇領を巡遊せられたと記してゐる。大東亜「日の御子文化圏」の復興を提唱されてゐる堀一郎氏はその極めて独創的なる小著「天神遊幸論序説」に於て我が国土の統治的主体者たりし天津神が動かざる国体を背に負ひ、身に帯して国中を巡遊教化された旨を述べ此れが我が国固有の伝説であることを主張されてゐる。同氏は之を「神の遊行」の信仰形態と称してゐる。


これを見る限りは、堀の学説を藤澤の妄想体系に取り込もうとしていた感じだね。堀自身がトンデモないことを言っていたか、もっと探らねばいけない。



藤澤は更に、

我が国の太古神代史を記述してゐる或る書物によればチヤーチワードのミユー大陸と符節を合するが如き皇領「ミヨイ」が太平洋上に存在してゐたが其の後大地震のために同じく陥没してしまつたのである。果して然らばミユー大陸の統治者は太古日本のすめらみことの「みこともち」たる日の御子であつたのではあるまいか。(中略)
今や大東亜戦争の進展と共に天運茲に循環し大東亜の復古維新が行はれつゝある。それは日の神を共同の祭神と仰ぎ、日の神の地上に於ける直接の顕現者であらせられる「すめらみこと」を絶対の政治的中心とする八紘為宇的一家秩序を再建することに外ならない。


前述の「日本太古秘史の或るもの」やこの「或る書物」とは、もちろん「竹内文献」のことだね。藤澤の偽史運動を支える根拠の中核は、竹内文献契丹古伝とムー大陸説だが、堀の学説も取り込もうとしていた節があるね。未来社の「堀一郎著作集」が10月に完結したところだが、戦前の堀の言動を改めて掘り起こす必要がある。