神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

柳田國男の周辺にいた怪しい織田善雄と『短歌至上主義』の杉浦翠子


 だんだんボケてきたのと古本を買いすぎるのと両方で、どこで買ったのか思い出せない古本が増えてきた。今回紹介する杉浦翠子編集の『短歌至上主義』10巻4号(藤浪会、昭和17年4月)も、最近西部古書会館で買ったような、違うようなとはっきりしない。と思っていたら、Twitterに写真を挙げていて先月大阪古書会館で買っていた…厚生書店の出品だったか。
 翠子は、杉浦非水*1の妻。『短歌至上主義』は、昭和8年11月創刊、昭和19年11月戦時歌誌統合により通巻122号で終刊、昭和22年7月『短歌至上』と改名として復刊した短歌雑誌*2で、翠子が主宰していた。意外と残っていないようで、日本近代文学館が4冊だけ、国会図書館が1冊だけマイクロ(占領関係資料)で所蔵している。「日本の古本屋」でも出品歴は4冊だけで、うち2冊は売却済みである。

 目次を挙げておく。驚くのは、織田善雄「『結ひ』と『結び』の原始民俗(三)」が載っていることである。織田は名古屋国語国文学会に属する住職で、エジプト文化の前代が日本の神代文化だったことを証明するために日本の神代文化を研究していた(「木村鷹太郎も真っ青、名古屋国語国文学会の織田善雄 - 神保町系オタオタ日記」参照)。柳田國男の『炭焼日記』には、柳田に竹内文書(あの竹内文献と思われる)や古神道を語る人物として登場する。経歴は、「柳田國男と「偽史」関係者織田善雄 - 神保町系オタオタ日記」を見られたい。織田は前記記事中でも、「『ムスビ』(産霊・結霊)は一説ではバビロン語の『ムチプ』と同根であると言はれてゐるが、語原の詮索は兎も角、思想の中心をなす具体的事実は、南方係[ママ]の様に考へられるのである」と脱線しかかっている。「『結ぶ民俗』と万葉集」続篇(通算第十一回)」とあって、長期間にわたる連載だったようだ。大幅に脱線して、竹内文献ムー大陸に言及していたりして(^_^;)
 ところで、織田の経歴中に「月刊短歌雑誌の発行に関与」とあるが、『短歌至上主義』の奥付に織田が発行所である藤浪会の名古屋支部として挙がっていた。織田は、寄稿するだけではなく、翠子とは相当親しかったと思われる。

*1:入手した『短歌至上主義』の奥付には、本名の朝武で発行人となっている。

*2:工藤信男編『杉浦翠子全歌集』(工藤信男、昭和57年9月)の年譜による。