神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

民間伝承の会主催日本民俗学講座と折口信夫主催鳥船社の歌会が開催された佐藤新興生活館


 神田駿河台の佐藤新興生活館については、「昭和17年民族学者杉浦健一が佐藤生活館で南方派遣者(?)向けの講演会ーースメラ学塾の南方指導者講座との関係ーー - 神保町系オタオタ日記」などで紹介したところである。今は山の上ホテルとなっていて、私もいつかは泊まってみたいものである。
 この佐藤新興生活館が柳田國男の年譜*1に出てくる。要約すると、

昭和14年
2月26日 佐藤新興生活館で行われた民間伝承の会東京会員大会の日本民俗学講演会で、「文化と文化系」を講演
3月26日 佐藤新興生活館で開催された民間伝承の会東京会員大会で「伝承者」を講演し、座談会ももつ。
4月14日 佐藤新興生活館で行われた民間伝承の会主催の日本民俗学講座で「祭礼と固有信仰」の第1回講演。丸の内ビルで行われていた講座の第7期に当たるが、丸の内ビル側の都合で休止していて、会場を移しての再開。

 その後の日本民俗学講座には折口信夫も参加している。折口の年譜*2によると、

昭和14年
9月22・29日 民間伝承の会主催日本民俗学講座(佐藤新興生活館)で「民間芸術」を講演
昭和15年
1月26・2月2日 民間伝承の会主催日本民俗学講座(佐藤新興生活館)で「民間芸術」を講演

 折口は佐藤新興生活館が気に入ったのか、折口が主催していた鳥船社の歌会も同館で行われるようになった。池田彌三郎『わが幻の歌びとたち:折口信夫とその周辺』(角川書店、昭和53年7月)掲載の波多郁太郎の日記には、

(昭和十四年十月)
五日(木) (略)鳥船短歌会、六時より佐藤新興生活会館にて。(略)
(同年十一月)
七日(火) 晴、温。鳥船歌会。五時より。佐藤新興生活館にて。(略)

 鳥船歌会は、以降も佐藤新興生活館で開催されている。鳥船社は『迢空・折口信夫事典』(勉誠出版、平成12年2月)に立項されていて、大正14年春に國學院大學予科の学生を中心に始まった折口が指導する短歌結社である。昭和13年3月以降、慶應義塾大学の学生波多、加藤守雄、池田、戸板康二ら8名が参加していた。
 日本民俗学講座や折口信夫の鳥船歌会が開催されていた佐藤新興生活館。貸館としての歴史も研究したら、面白そうだ。

*1:柳田國男全集別巻1』(筑摩書房平成31年3月)

*2:折口信夫全集第36巻』(中央公論新社、平成13年2月)