神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

オカルティストとしての下中彌三郎

中島岳志下中彌三郎』(平凡社、2015年3月)は、超国家主義者としての側面が中心で、オカルティストとしての下中はあまり出てこない。その点で、やや物足りないものがあった。それでも、323頁で紹介された「万教帰一」『無派』昭和37年8月号は面白かった。昭和30年の宗教世界会議前後に書かれたものらしいが、

それは、すべてを包んで何れの宗教宗派をもしりぞけようとしないセオソフィーの立場こそが、中心であり、神ながら信仰こそがそのセオソフィーに合致するところの信仰形態であるのである。

とある。下中に「セオソフィー」すなわち神智学を教えた人物の最有力候補は三浦関造だろう。下中と三浦の関係については、[平凡社創設者下中彌三郎の謎(その2)」、「下中彌三郎と三浦関造」「関東大震災前後の三浦関造」などで言及したことがある。また、三浦と神智学については、「三浦関造と神智学」参照。
その他、本書で気になったのは、
96頁で明治38年の「見神」の体験にふれているが、同年の「予が見神の実験」収録の綱島梁川『病間録』(金尾文淵堂)に言及した方がいいだろう。
290頁で公職追放事由について、大亜細亜協会理事長と大日本興亜同盟常任理事にふれているが、皇国同志会理事についても言及する必要があろう。