神保町系オタオタ日記

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『出版社〈ミニ社史〉横断索引』で読み解く早川書房創業年の謎ー8月17日コミケでレファレンス・ツール発売ー


 今日8月15日は早川書房創業80周年の記念日である。80年前の8月15日、創
業者の早川清は、玉音放送を聴きながら、出版業を決意した。早川書房は現在では公式にこの日を創業日としている。
 さて、8月17日コミケ東ツ36aで発売される河原努編著・小林昌樹*1解説『出版社 〈ミニ社史〉横断索引:2300社の自社紹介が見つかる』(近代出版研究所。以下「本書」という)は、社史とまではいかないミニ社史(自社紹介)と一部の第三者による紹介のリストを出版社2360社の五十音順に配列したレファレンス・ツールである。出典である44点のうち、『著作権台帳昭和26年版』の自社紹介と国会図書館にはない『図書案内』(古典社、昭和9年)を再録しているのは貴重である。ただし、逆に言うとそれ以外は創業者名(代表者名)や創業年(設立年)を出典から抽出したリストである。そのため、普通の人は読むものではなく、調べたい出版社があればその時に引くツールである。

 本書で早川書房を見てみよう。これを見ると、1965(昭和40)年の第三者紹介(▼印)及び自社紹介以降創業年を昭和21年(出典によっては同年5月)とする時期が続き、1973(昭和48)年に初めて創業年を昭和20年としていることが分かる。なお、1980(昭和55)年に創業年月日を昭和22年8月15日としているのは、出典の「日販30」*2の誤植と思われる。
 早川書房の創業時期については、このリストにない時期を挙げる文献もある。『日本出版百年史年表』(日本書籍出版協会、昭和43年10月)で、そこでは昭和20年10月1日とある。『日本経済新聞』で今年の6月に連載された現会長(当時社長)早川浩氏の「私の履歴書」によれば、演劇青年だった父清は玉音放送を聴きながら戦前第一書房から刊行された『悲劇喜劇』を自分の手で世に送り出そうと考えた。そして、焼け跡にバラックを建て会社を設立したという。このバラックを建てた時が、昭和20年10月1日か21年5月なのだろう。そして、22年11月に『悲劇喜劇』を創刊している*3
 本書を見ていると他にも創業年が変遷する出版社が散見される。引いてもよし、(調べるのが好きな人は)読んでもよしのツールである。本書は、『戦時・占領期出版史資料索引 戦時企業整備・公職追放・ミニ社史』(近代出版研究所、令和4年12月)の「ミニ社史」の部分を大幅に拡張したものである。同書は売り切れである。本書がコミケで発行分すべてが売り切れるとは思えないものの、早く手に入れたい人は8月17日コミケで入手されたい(3千円)。残部は、「皓星社ウェブストア」で通販対応されるはずである。出版関係者、出版史研究者、図書館関係者、調べるのが趣味の人は、入手しておこう。
 

*1:奇しくも、『立ち読みの歴史』(早川書房、令和7年4月)の著者である。

*2:『日販三十年のあゆみ』(日本出版販売、昭和55年3月)

*3:最初の出版は、徳川夢聲『自傳夢聲漫筆:明治篇』(昭和21年6月)か。『早川書房の五十年』(早川書房、平成7年9月)の年表には、昭和20年8月15日の創業から22年11月の『悲劇喜劇』創刊までの間の記載はない。