神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

大崎善生「赦しの鬼 団鬼六の生涯」(小説新潮連載)への補足

つぶやいてばかりで、こちらの更新を怠っていたが、たまにはアップ。
小説新潮』連載の大崎善生「赦しの鬼 団鬼六の生涯」が完結。単行本化されると思うが、補足。同誌2011年7月号に

また昭和を代表する詩人金子光晴の年表の中にも虎雄は登場する。
やはり昭和二年のことで、この年金子と虎雄は連れ立って三ヶ月に及ぶ上海旅行に行っている。しかもその間に金子は妻三千代に駆け落ちされるというおまけまでついている。
(略)自由を得て三ヶ月に及ぶ上海行きとなったのではないだろうか。
これらのことからも二人の離婚は昭和二年の早い時期であったと推測される。

とあって、大崎氏は、国木田虎雄、幸江の二人の離婚を昭和二年の早い時期と推測している。ところが、その典拠とされる金子の年表が誤っているらしい。原満三寿『評伝金子光晴』(北溟社、2011年12月)165頁に、

二八(昭和三年)二月、光晴は、三千代に虎雄から借りた五十円を渡し、乾をつれて長崎にあずけ、虎雄・道子夫妻と上海に旅立った(この年をニ七年とする年譜が殆どだが間違い)。

とある。
(参考)「団鬼六の母香取幸枝と六条奈美子
追記:『赦す人』(新潮社、2012年11月)として刊行されたが、訂正されていなかった。