神保町系オタオタ日記

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古書西荻モンガ堂で「個人名のついた研究会会誌の世界」展開催

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源氏物語』の定家本のうち、『若紫』一帖が発見され、研究者やマスコミがひと騒ぎである。特に紫式部学会では大騒ぎだろうか。同学会が戦前・戦中発行し、戦後の昭和37年11月に再発行した『むらさき』という雑誌がある。2巻7号,昭和10年7月の写真を挙げておいた。学会発行というと堅苦しい雑誌を想像してしまうが、目次を挙げたように、翻訳小説あり、映画の紹介ありで、表紙に「趣味と教養」とあるとおり硬軟両様の誌面となっている。
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紫式部学会及び『むらさき』については、今井久代・中野貴文・和田博文編『女学生とジェンダー 女性教養誌『むらさき』を鏡として』(笠間書院平成31年3月)に詳しい。同書の田坂憲二「紫式部学会と雑誌『むらさき』」によれば、紫式部学会は昭和7年5月創立、会長藤村作、講師久松潜一・池田亀鑑。『むらさき』は昭和9年5月創刊*1、19年6月号で終刊した。また、座談会「女学生とジェンダー 一九三四ー一九四四」中の和田氏の発言によると、

・現在の『むらさき』の「印象は、『源氏物語』に特化した学術雑誌」だが、戦前版は「文学雑誌というよりは、女性教養誌という性格が強く」、そのため戦前版の復刻をあきらめたという。
・池田利夫編『雑誌『むらさき』戦前版戦後版総目次と執筆者索引』(武蔵野書院、平成5年)によると、戦前版では「生田花世・今井邦子・円地文子・岡田禎子・岡本かの子林芙美子・深尾須磨子・真杉靜枝・水町京子・森三千代・与謝野晶子などの女性文学者が、常連執筆者」で、「男性文学者では、金子光晴草野心平佐藤惣之助釈迢空室生犀星らが、執筆回数で目立って」いるという。
昭和19年1月に「日本出版会は、雑誌の統合整備を発表し」、「『むらさき』も六月号の「編輯後記」にあるように、六種類の短歌誌と統合され、『芸苑』として新発足」したという。

さて、『むらさき』のように個人名のついた研究会会誌を集めた展覧会が古書西荻モンガ堂で12月2日(月)から22日(日)まで開催される。企画は、かわじもとたか氏で、私も少しだけ協力するが、かわじさんや林哲夫氏を初めとする強力な協力者による見たことも聞いたこともないような貴重な研究会会誌も披露されることだろう。まだ、だいぶ先の話ではあるが、忘れずに是非とも行っていただきたい。

女学生とジェンダー: 女性教養誌『むらさき』を鏡として

女学生とジェンダー: 女性教養誌『むらさき』を鏡として

*1:別に同年2月「創刊特輯号」あり。