東京日日新聞の記者佐藤巌の『新聞遍路』(松山房、昭和6年12月)に、
大正十二年三月、文壇に盛名ある久米正雄、里見弓享、加能作次郎、田中純、松崎天民、岡栄一郎、山中忠雄の諸氏を案内し、私が東道役となつて別府温泉に遊んだ。また昭和三年十月には同じく久米正雄、同艶子夫人、佐々木茂索、同ふさ子夫人、南部修太郎、松崎天民、小島政二郎、菅忠雄の諸氏を案内して別府温泉に遊んだ。何れもこれ等文壇人の筆を通じて別府を天下に紹介して貰いたい為めであつた。
とある。前者については、大正12年3月17日付東京朝日新聞の「学藝だより」に、「加能作次郎氏は廿三日頃菊池寛、吉井勇、久米正雄、田中純、岡栄一郎氏等と共に別府に赴く由」とあるほか、『文章倶楽部』同年5月号の「文壇近事画報(3)」掲載の写真「別府温泉に於ける久米・里見・加能・田中の諸氏」のキャプションに加能、里見、田中、岡、久米の名がある。後者は確認できない。
猫猫先生がシコシコと(?)執筆中の久米正雄と、坪内祐三氏が『ちくま』で連載中の松崎天民は、少なくとも二度別府温泉行きを共にしているのだね。
追記:松崎天民「別府温泉私記」『文藝春秋』昭和4年1月新年特別号によれば、24日出発、別府滞在は3年10月25日〜31日。メンバーは、久米夫妻、小島政二郎、同父母、佐々木茂索夫妻、南部修太郎、菅忠雄、加藤六蔵、佐藤巌。